研究課題
本研究では、卵巣顆粒膜細胞へ転写因子SF-1およびLRH-1を導入することで、HSD11B2遺伝子が発現誘導されることを見出した。当該年度では、HSD11B2の発現誘導メカニズムおよびその役割について解析した。HSD11B2プロモータ解析を行ったところ、HSD11B2遺伝子上流約1200bpの領域にSF-1によって調節される領域が存在した。さらに、ヒト生殖腺におけるHSD11B2の機能について解析した。哺乳類においてHSD11B2は、グルココルチコイドに対する不活性化酵素としてよく知られている。一方、魚類においてHSD11B2は、アンドロゲンである11-ケトテストステロン(11-KT)合成に関与する。以前我々は、げっ歯類の生殖腺においても11-KTが合成され、その合成経路にHSD11B2が関与することを明らかにした。そこで、ヒトにおいてもHSD11B2が11-KT合成に関与するか解析した。HSD11B2のヒト生殖腺における発現を調べたところ、ヒト精巣と卵巣の両方で発現していた。さらに、ヒト血中における11-KTとT濃度を測定したところ、男性血中のT濃度は女性の10倍以上高濃度であるのに対し、11-KT濃度には男女間で差を認めなかった。興味深いことに、女性血中においては11-KT濃度はT濃度と同程度であった。レポーターアッセイによりアンドロゲン受容体(AR)の転写活性化能を測定したところ、11-KTはTと同様にARを活性化することが明らかになった。一方、アロマターゼを発現する乳癌由来のMCF-7細胞において、Tはエストロゲンに変換されることでエストロゲン受容体(ER)を活性化したが、11-KTはERを全く活性化しなかった。以上の結果より、11-KTはヒト生殖腺においても産生され、女性においてはエストロゲンへ変換されないアンドロゲンとして重要な役割を果たすことが示唆された。
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