研究課題/領域番号 |
25861484
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 靖 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (60646652)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | lipocalin2 / 卵巣子宮内膜症性嚢胞 / l卵巣明細胞腺癌 / 卵巣類内膜腺癌 / 酸化ストレス耐性 / 抗癌剤耐性 / 活性酸素種 |
研究概要 |
まず、免疫染色によるlipocalin2 (LCN2)発現の検討では、正常卵巣の封入嚢胞に比較して子宮内膜症腺上皮でlipocalin2 (LCN2)発現が有意に強く(P<0.01)、特に癌が併存する場合に発現が増強していた(P=0.02)。また上皮性卵巣癌においては、子宮内膜症に関連した明細胞腺癌、類内膜腺癌で発現が強い一方、漿液性腺癌では殆ど発現が認められなかった(P<0.01)。さらに非漿液性卵巣癌(明細胞、類内膜、粘液性)において、カプランマイヤー法(P=0.009)、コックス多変量解析(P=0.026)でLCN2高発現が予後不良因子となることを見出した。LCN2は子宮内膜症の癌化・進行に関与することが考えられた。 次に子宮内膜症性嚢胞内では炎症と多量の遊離鉄により過剰な酸化ストレス状態にあると考えられることから、LCN2と酸化ストレスとの関係を培養細胞で検討した。LCN2低発現卵巣明細胞腺癌細胞株ES2にLCN2 cDNAを導入し、安定強発現させたES2-LCN2を樹立した。酸化ストレスとしてH2O2を培養液に添加し、DNA損傷マーカーである8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8‐OHdG)発現、活性酸素種(ROS)産生をROS感受性蛍光プローブのジクロロフルオレシン(DCFH)、アポトーシスをアネキシンV染色、細胞生存能をWST-1アッセイを用いて検討すると、組み替えLCN2(rLCN2)添加やLCN2高発現は、ROS産生を抑制し、酸化ストレスを軽減すること、さらにアポトーシスを抑制し細胞生存能を高めることが示された。さらに、ES2-LCN2ではシスプラチンやパクリタキセルに対しても細胞の生存能を高めることが観察された。LCN2は酸化ストレス耐性や抗癌剤耐性を増強し、卵巣癌細胞の生存を促進すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初H26年度以降に計画していた卵巣癌細胞株を用いたLCN2機能解析を、すでに進めている。浸潤能や造腫瘍能に対する作用についても、結果を得られつつあり、また合計3種の細胞株を用いて、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通りにすすめる。LCN2による酸化ストレス耐性や抗癌剤耐性について更に検討を進める。そのためにLCN2と相互作用する分子や下流分子の検索が必要である。これにはマイクロアレイ法や免役沈降法とTOF-MAS法を用いて検索することを計画している。またLCN2による抗酸化酵素群の発現状況の変化も検討していく。我々の最近の予備実験でLCN2により癌幹細胞マーカー発現の変化が観察されており、これが酸化ストレス耐性や抗癌剤耐性と関連している可能性が考えられ、さらに検討していく。
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