研究課題/領域番号 |
25861484
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 靖 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (60646652)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | lipocalin2 / 卵巣明細胞腺癌 / 酸化ストレス耐性 / 抗癌剤耐性 / グルタチオン / CD44 variant / xCT |
研究実績の概要 |
昨年までの実験結果より、我々はlipocalin2 (LCN2)を発現させた卵巣明細胞腺癌細胞株において酸化ストレス耐性や抗癌剤耐性が増強することを見出したため、その耐性獲得機序について検討した。まずSODやGPx等の抗酸化酵素のmRNA発現や蛋白発現をreal-time RT-PCR法やウェスタンブロッティング(WB)法を用いて解析したが、有意な差を認めなかった。そこで還元反応の基質として作用するグルタチオン濃度を測定したところ、卵巣明細胞腺癌細胞株ES2ではLCN2を高発現させたES2-LCN2において有意にグルタチオン濃度が上昇していた(P<0.001)。グルタチオン合成の律速段階はシスチンの細胞内への取り込みであることから、シスチンの輸送体であるxCTや、その発現を安定化するCD44 variant(CD44v)のmRNA発現や蛋白発現をRT-PCR法およびWB法で検討したところ、mRNA発現に差を認めなかったがES2-LCN2ではコントロール細胞ES2-mockに比べてxCT、CD44vの蛋白発現が増強していた。これらの結果よりLCN2はCD44vおよびxCT蛋白発現を転写後調節により増強させることで、シスチンの細胞内への取り込み増加から細胞内のグルタチオン濃度を上昇させ、酸化ストレス耐性・抗癌剤耐性に寄与すると考えられた。 LCN2がCD44v蛋白発現を調節する機序は不明であり、作用発現のための下流因子を検討するため、マイクロアレイを用いて卵巣癌細胞株ES2(ES2-mock vs ES2-LCN2)、RMG1(RMG1-mock vs LCN2発現抑制RMG1-shLCN2)および子宮内膜癌細胞株HHUA (HHUA-mock vs HHUA-shLCN2)で発現差のある候補遺伝子を抽出した。今後、この候補遺伝子について、検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LCN2の酸化ストレス耐性や抗癌剤耐性の機序として、CD44v発現やxCT発現上昇によるグルタチオン濃度上昇が関与していることを見出した。CD44vは癌幹細胞マーカーとしても注目されており、LCN2発現とこれらの分子の発現の関連の報告はなく、我々が新規に見出したものである。現在他の細胞株でも同様の結果が得られるか解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通りにすすめる。LCN2高発現卵巣明細胞腺癌細胞株とコントロール細胞株をヌードマウスの皮下に移植し、造腫瘍能や抗癌剤耐性を比較する。またLCN2と相互作用する分子や下流分子の検索が必要であるが、これにはマイクロアレイ法で抽出された因子について検討を進める。また免役沈降法や質量分析法を用いて検索することを計画している。
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