研究概要 |
1)羊水混濁の組織学的客観的な診断基準の確立 羊水混濁の重症度は分娩時の羊水の肉眼的な印象によってなされ客観的な診断基準は確立されていない。亜鉛コプロポルフィリンは胎便中に特異的に存在する。我々は亜鉛コプロポルフィリンに対する特異的なモノクローナル抗体を作成し卵膜、胎盤、臍帯の免疫染色に応用し胎便被曝である羊水混濁の有無を組織学的に診断することを可能とした(Furuta et al., Placenta 33; 24-30,2012)。抗亜鉛コプロポルフィリン抗体を用いた免疫染色により羊水混濁の重症度に関して客観的なステージ分類を提案した。胎盤、卵膜、臍帯においてHE染色と抗亜鉛コプロポルフィリン抗体の免疫染色を行い羊水混濁の客観的な組織学的診断基準の確立を目指している。 2)羊水混濁が期破水に及ぼす影響の解析 羊水中に排出される胎便が、胎児成熟のシグナルとして卵膜や胎盤に作用する可能性を想定して、早産、正期産、過期産の胎盤卵膜を組織学的に検討した。経腟分娩において前期破水のなかった症例とと前期破水のあった症例を比較すると後者ではCAMがなく、胎便汚染があるものが多く存在し、胎便暴露による内因性の前期破水があることが示された。 3)新生児死亡で剖検となった症例の肺組織の検討 過去30年間に浜松医科大学で新生児死亡あるいは胎児死亡症例に対して行われた剖検において組織が保存されている症例について肺組織に亜鉛コプロポルフィリンの免疫染色による検討を行った。炎症所見と低酸素・虚血の所見ならびに産科と新生児科の臨床医録を後方視的に検討し、胎便吸引と新生児死亡の病態の関連の有無を検討する予定である。胎便成分がマクロファージに貪食された形で免疫染色される症例と肺のマクロファージとは無関係に胎便成分が検出される症例が存在した。
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