多嚢胞性卵巣症候群は複雑な病態を呈する疾患であり、その病態はパルス状GnRH/LH分泌の異常のみならず、高インスリン血症、高アンドロゲン血症などが挙げられており、その病因については未だ不明な点も多い。近年、キスペプチンという神経ペプチドが発見され、視床下部弓状核キスペプチンニューロンがGnRHのパルス状分泌を制御している可能性が様々な動物種で示唆されている。これらの背景を踏まえて、多嚢胞性卵巣症候群の病態解明及び根治的な治療法の開発を目的として、多嚢胞性卵巣症候群モデルラットの作製と視床下部弓状核キスペプチンニューロンに作用する薬剤の研究を結びつける研究の着想に至った。 これまでに報告された多嚢胞性卵巣症候群モデル動物において、パルス状GnRH/LH分泌あるいは中枢神経系におけるキスペプチンの作用について解析をおこなったものは少ない。そこで我々は現在までに報告されている多嚢胞性卵巣症候群モデル動物のうち、抗プロゲステロン剤であるRU486およびダイノルフィン投与によるモデル動物において、パルス状GnRH/LH分泌および視床下部弓状核におけるキスペプチン発現について解析をおこなった。 プロゲステロンのフィードバックの阻害により、視床下部弓状核のキスペプチンを介してLH分泌が促進され、多嚢胞性卵巣症候群の病態に中枢レベルでのGnRH分泌制御機構の異常が関与していることが考えられた。本内容に関して学会発表をおこない、さらに学会での発表に基づいた論文を執筆、投稿をおこなった。
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