研究概要 |
本研究では、胎児ファイブロネクチン(fFN)が卵膜および子宮平滑筋に与える影響を解析し、fFNが早産発症の病態形成に重要な役割を担っていることを証明し、さらにfFN経路の阻害という新しい観点から早産の予防・治療方法を開発する。 1) fFNはヒト子宮平滑筋においてCOX2 mRNAを増加させる→ヒト初代子宮平滑筋細胞にfFNを投与すると、プロスタグランジン(PG)産生の律速酵素であるCOX2 mRNAは対照に比べて約1.4倍増加した(P<0.05)。これはfFNがPGF2αの産生を介して子宮収縮を促進させる可能性を示唆する。 2) EDAはfFNによるMMPs, COX2産生の上昇における作用部位である→FNのexonの1つであるEDAのリコンビナント蛋白を作成し(対照ペプチドとなるtype III repeat No11, III11も作成)ヒト羊膜間葉細胞に投与したところ、コラーゲン分解酵素であるMMP1, MMP9 mRNAとCOX2 mRNAとを増加させた。このEDAがfFNによるMMPs, COX2産生を増加の作用部位であることを同定した。 3) EDAは妊娠マウスを早産させる →妊娠17.5日目の妊娠マウスの卵膜上にIII11またはEDAを局所投与し分娩までの時間を測定した。すると投与から分娩までの時間はIII11投与群では38.7 ± 5.7時間であったのに対して、EDA投与群では24.1 ± 1.5時間と分娩までの時間が有意に早かった(n=8~10, P<0.05)。6時間後にサンプリングを行うと、EDA群ではIII11群に比して卵膜のCOX2 mRNAが約1.5倍高値であった (n=8~10, P<0.05)。in vitroでもEDAはCOX2を介したPG産生を増加させ、子宮収縮・子宮頸管熟化を促して早産を生じさせている可能性がある。
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