研究実績の概要 |
本研究では胎児ファイブロネクチン(fFN)の前期破水・早産発症におけるメカニズムの解明を発展させた。 1)fFNの作用部位の同定:fFN のexon の1つであるEDA ドメインに対して大腸菌を用いてリコンビナントEDA(rEDA)を作成した。このrEDA(0.1µM)を羊膜間葉細胞に投与するとMMP1 , MMP9 , COX2 mRNAを各々280倍、22倍、4倍増加させ 、さらにMMP1活性を34倍、PGE2産生を29倍増加させた(P 2)妊娠マウスへのfFNの影響:さらにrEDA (1µM)を妊娠17.5日目のマウス卵膜に局所投与すると、対照群では投与後38±18時間後に分娩となったが(n=10)、rEDA投与群では24±4時間後での早産となった(n=8, P 3)fFN の受容体の同定:羊膜間葉細胞においてfFNによるMMP1, MMP9, COX2 mRNAの増加はToll-like receptor-4 (TLR4)機能阻害抗体により抑制された。つまりfFNの受容体の1つとしてTLR4が重要であることが明らかになった 。これは自然免疫・炎症カスケードで重要なTLR4シグナルを阻害することにより前期破水の予防・治療の可能性を示唆する重要な知見である。 4)fFNの子宮平滑筋に対する影響の検討:初代培養子宮平滑筋細胞にfFNを投与したが、収縮関連蛋白のmRNAの発現はいずれも変化しなかった。つまりfFNが早産を生じるメカニズムとしてfFNが子宮平滑筋に直接作用するのではなく、fFNが卵膜におけるPGE2発現を増加させ間接的に子宮平滑筋を収縮させることが示唆された。
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