研究課題
若手研究(B)
子宮内膜間質細胞の脱落膜化では、細胞の機能や代謝亢進に伴い活性酸素が発生する。しかし、子宮内膜間質細胞では活性酸素消去酵素の1つであるmanganese superoxide dismutase (Mn-SOD)が誘導されるために、ミトコンドリアで発生する活性酸素は消去され、細胞の生命維持機構が保たれる。しかし、このMn-SOD発現調節機構は充分解明されていない。本研究では、脱落膜化によるMn-SOD遺伝子発現調節に関する新たな転写活性経路の同定に加え、エピジェネティックな調節機構がMn-SODの転写調節に関与しているかを検討した。増殖期の子宮内膜からESCを分離培養し、脱落膜化を誘導させた。まず、Mn-SOD発現を調節する新たな転写因子としてC/EBPbに着目し検討したところ、脱落膜刺激により、C/EBPbがMn-SODのenhancer領域に結合することを解明した。また、この領域は転写活性を持っていることをルシフェラーゼアッセイにより証明した。さらに、C/EBPbのノックダウンによりMn-SOD発現が減弱した。以上より、脱落膜化におけるC/EBPbを介した新たなMn-SOD発現調節機構を見出すことに成功した。さらに、このMn-SODのenhancer領域におけるヒストン修飾状態を検討したところ、転写活性化指標であるH3K27acとH3K4me3修飾が高い状況であり、このことは活性化クロマチン構造を形成し転写因子が結合しやすい状況を作り出していると考えられた。以上より、脱落膜化におけるC/EBPbを介した新たなMn-SOD遺伝子発現調節機構に加え、エピジェネティックな調節機構の関与を新たに見出した。
2: おおむね順調に進展している
Mn-SOD発現に関与する新たな転写因子とエピジェネティック調節機構の解明が目的だったところ、転写因子C/EBPbの関与とヒストン修飾の状態を解明することができたので、おおむね順調に進展していると評価した。
平成26年はepigenetic調節機構の詳細をさらに解明することを目的とする。そのためには、これまで通り、月一回のカンファレンスにて研究の推進状況を報告し、研究成果に対して討論を行い、研究の方向性を適宜調整することにより研究効率の向上を図る。
本年度の実験内容に変更はなかったが、実験が順調に進んだこと及び実験試薬の変更などにより、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、ChIP assayなどに用いる実験試薬や消耗品、成果発表の旅費に合わせて使用する。
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Endocrinology
巻: 155 ページ: 275-286