晩婚化により初産年齢は高齢化の一途をたどり、不妊治療を要するカップルが急増しているが、食生活と不妊症の関連に関する情報はほとんどない。n-3系多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸であり、生体内で合成されないにもかかわらず、それらを豊富に含む魚類の摂取量は若年者において年々低下している。特に沖縄県は肉食中心で魚類を食す頻度が低い点が特徴である。本研究の目的は体外受精・胚移植(In vitro fertilization- transfer:IVF- ET)において卵胞液内の多価不飽和脂肪酸濃度と卵子や胚の質との関連について明らかにすることである。 IVF-ET施行例の血中脂肪酸濃度と卵胞液内脂肪酸濃度を測定したところ、血中脂肪酸濃度と卵胞液内濃度は相関を示した。受精卵の得られた卵胞液においては、未受精卵であった卵胞液よりもアラキドン酸が有意に高く、EPAは有意に低い値となった。しかしながら追加の検討によりn-3多価不飽和脂肪酸/n-6多価不飽和脂肪酸比は受精率と正の相関を示し、EPAやDHAを含む魚類の摂食が受精に関連することが示唆された。今後は、これらn-3多価不飽和脂肪酸/n-6多価不飽和脂肪酸比がさらに、胚発生、胚の質と関連するかについても検討していく。
|