研究概要 |
【目的】子宮内膜脱落膜化はコルチゾンを活性型コルチゾールへ変換する酵素、11βHSD1の著名な発現を誘起し、着床部位でのコルチゾール合成を促す。習慣流産と関与する、子宮内膜細胞の異常増加した子宮NK細胞は、新生血管の異常発育を引き起こし、グルココルチコイド投与で抑制される。我々は、コルチゾールが子宮NK細胞やコルチコステロイド依存性標的遺伝子の局所発現に関与すると仮定し、検討を行った。 【方法】患者から承諾を得た後に採取した、黄体中期のヒト子宮内膜細胞の一部を免疫染色し、子宮内膜間質細胞のうちCD56陽性細胞<5%を子宮NK細胞密度正常とした。子宮NK細胞密度高値例(n=18)と正常例(n=18)を11βHSD1, グルココルチコイド受容体 (GR), ミネラルコルチコイド受容体 (MR)で染色し、組織マイクロアレイで解析した。またin vitroの初期培養後、未分化のままの細胞と4日もしくは8日間、培養液にホルモン製剤を添加し、脱落膜化させた細胞を回収し分子解析を行った。 【結果】子宮NK細胞密度高値を伴う子宮内膜細胞は、in vivoで11βHSD1とMRの発現低下を認めたが、GRとの関与は認めなかった。また子宮NK細胞密度高値例の子宮脱落膜細胞は、in vitroで脱落膜マーカー(PRL, IGFBP1, 11βHSD1)とMR依存性レチノイド代謝酵素(DHRS3, RETSAT)の発現低下を認めた。子宮NK細胞を制御するサイトカイン、IL11とIL15の発現は、子宮NK細胞密度と相関を認めなかった。 【結論】子宮内膜において増加した子宮NK細胞は、11βHSD1を介した局所のコルチゾール合成の障害や脂肪滴・レチノイドの合成と関与するMR依存性酵素の発現低下と関与していることが明らかとなった。更には脱落膜化の異常を導き、流産と関与する可能性が示唆された。
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