研究課題/領域番号 |
25861509
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
仲村 将光 昭和大学, 医学部, 助教 (50465126)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎児発育不全 / 胎盤機能 / 胎児循環不全 / 臍帯静脈血 / 予後予測 |
研究実績の概要 |
妊娠初期における複数回の胎児頭殿長計測による児の予後予測に関する研究:妊娠8-10までに、排卵日・受精日の情報および妊娠8-10週の胎児頭殿長により決定した妊娠新週数をもとに妊娠11-13週の胎児頭殿長計測値を評価する。妊娠11-13週の胎児頭殿長は計測した妊娠日数で標準化して評価した。妊娠11-13週の胎児頭殿長が10%tile未満であった症例では、Trisomy 18、流産、分娩時のSmall-for-date infantの頻度が有意に高かった。このことより、First trimesterにおいて妊娠週数を決定したうえで、妊娠11-13週の胎児頭殿長の評価が、児の予後を予測することを可能にするという結果であった。このような内容で、論文をFetal diagnosis and therapyという雑誌に投稿し、2015年3月12日にAcceptされ、同年5月8日に掲載された。 妊娠37-41週で出生した児を対象として、分娩時に採取した臍帯静脈血のプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリン/フィブリノゲン分解産物(FDP)、D-dimer値を測定した。それらの測定値を-1.5SD以下のLFD児(5例)と正常発育児(19例)で比較した。LFD群と正常群におけるPTとAPTTはそれぞれ14.5±0.8 vs 14.2±1.3秒、53.4±9.8 vs 55.6±11.0秒と差はなかったが、FDPは12.2±10.5 vs 7.4±8.2 μg/dl、D-dimerは2.2±0.0 vs 1.2±5.0 μg/ml(p=0.036)と線溶系マーカーはLFD群で高値であった。その理由として臍帯異常が含まれる胎児発育異常例では胎盤鬱血により胎児循環内に血栓形成の病態が生じていると考えられる。今後、症例を重ねて論文投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの研究がやや遅れている理由として、特に母体の合併症の予測に関しては、合併症の頻度が低く、検討するサンプル数として検討するには少ないことがあげられる。常位胎盤早期剥離や妊娠高血圧症候群の頻度は、研究前に当院での分娩数から予想されたものよりも低いのが現状である。研究期間の延長が必要となる可能性がある。 また、研究の同意が得られたものも少ないことがあげられ、研究の意義や重要性、およびプライバシーの保護についても十分理解が得られるよう対象の妊婦に対する説明が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
対象妊婦への研究参加に関する説明を充分行い、本研究の意義や重要性を理解してもらえるよう努力する。妊婦に対する侵襲は、血液採取であるので比較的低侵襲であることも説明する。 合併症の頻度が予想よりも低かったため、研究期間を延長して対象を増やしていく必要となる可能性がある。 対象を胎児・臍帯・胎盤の超音波所見や娩出された臍帯血のデータについて、その関係性を明らかにすることで、胎児の予後予測が可能となる研究も並行して行い、妊娠合併症の予知を可能とするような研究を加えていくことを考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予想されていた周産期合併症の頻度よりも、実際発生した周産期合併症の頻度が低かったことから、母体血液のサンプリングが進まなかったことが、次年度使用額が生じた理由であったと考えられる。当院で分娩した妊婦のポピュレーションに違いがないと思われるが、何らかの理由で、研究期間中の周産期合併症の頻度が低かったこともその理由として挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
サンプリングの期間を延長することにより、その期間中に発生した周産期合併症妊婦を対象として研究を継続する。超音波検査所見と児の予後に関する研究に関しては、継続的に検討結果として出てきているので、それらの結果を論文化すること、および学会等で成果を発表していくことで、繰り越した費用について随時使用していく計画である。
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