研究課題/領域番号 |
25861510
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
竹中 慎 昭和大学, 医学部, 助教 (60515211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胎児発育不全 |
研究実績の概要 |
未陣発かつ未破水で選択的帝王切開術で分娩となった2絨毛膜2羊膜双胎の患者から採取した胎盤から絨毛組織を採取し、絨毛のDNAメチル化プロファイルを平成25年度に作成した。対象は2児とも胎児発育が正常であった3症例(6胎盤)と1児は正常発育であったがもう一方は胎児発育不全(FGR)であった3症例(6胎盤)であった。平成26年度は得られたプロファイルを解析した。 はじめに、「環境因子の影響を排除して比較することでFGRの発症に関連するDNAメチル化異常を発見する」ために、1児は正常発育であったがもう一方はFGRであった症例でそれぞれ双胎間の比較を行った。双胎間でDNAメチル化の程度が近似しているCpG siteと有意差を認めるCpG siteが存在することが確認された。後者は、「環境の影響によらない、FGR発症に関連するDNAメチル化異常」の候補CpG siteと考える。 次に「環境の影響によるものではなく、かつ胎児発育には影響を及ぼすものではないDNAメチル化変化を明らかにする」ために、2児とも胎児発育が正常であった3症例において双胎間で比較した。その結果、DNAメチル化の程度が近似しているCpG siteが多く確認されたが、有意差を認めるCpG siteも存在し、「環境の影響によるものではなく、かつ胎児発育には影響を及ぼすものではないDNAメチル化変化」が存在することが確認された。 「環境の影響によらない、FGR発症への関与が示唆されるDNAメチル化異常」の候補CpG siteが抽出された。しかし対象とした2絨毛膜2羊膜双胎は1卵性と2卵性の両方の可能性があり、抽出された変化には2卵性である故に双胎間にDNAメチル化の差異が生じたものが含まれている可能性が考えられた。そこで、双胎間輸血症候群の発症が否定的である1絨毛膜2羊膜双胎症例も対象に再評価する方針とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25、26年度の研究の結果、本研究の目的である「環境の影響によらない、胎児発育不全発症への関与が示唆されるDNAメチル化異常」の候補CpG siteが抽出された。しかし対象とした2絨毛膜2羊膜双胎は、1卵性と2卵性の両方の可能性があり、候補として抽出されたCpG siteの中には、2卵性であったが故に双胎間にDNAメチル化の差異が生じたものが含まれている可能性が考えられた。そこで、今回抽出された候補CpG siteが本当に胎児発育不全発症に関与している可能性があるかどうかを、双胎間輸血症候群の発症が否定的で、かつ2児とも成長が順調であった1絨毛膜2羊膜双胎と1児のみ胎児発育不全であった1絨毛膜2羊膜双胎の症例も対象とし、パイロシークエンス法でDNAメチル化率を定量、比較することで再評価する方針とした。しかし平成26年度内に解析に耐えうる症例数に達しておらず、本研究は現在継続中である。 研究を進めていった結果、研究対象を追加することとなったことが目的の達成が予定よりも遅れている一番の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、2絨毛膜2羊膜双胎だけでなく、双胎間輸血症候群の発症が否定的で、かつ2児とも成長が順調であった1絨毛膜2羊膜双胎と1児のみ胎児発育不全であった1絨毛膜2羊膜双胎の症例も対象とし、胎盤から絨毛組織を採取、保存している。 検体回収のあいだに、施行予定であるパイロシークエンスの準備を並行して行い、検討に耐えうる検体数の回収が終了次第、次のステップに移行できるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25、26年度の研究の結果、抽出された「環境の影響によらない、胎児発育不全発症への関与が示唆されるDNAメチル化異常」の候補CpG siteが本当に胎児発育不全発症に関与している可能性があるかどうかを、双胎間輸血症候群の発症が否定的で、かつ2児とも成長が順調であった1絨毛膜2羊膜双胎と1児のみ胎児発育不全であった1絨毛膜2羊膜双胎の症例も対象に確認することとしたが、平成26年度内に解析に耐えうる症例数に達しなかったため現在継続中である。
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次年度使用額の使用計画 |
双胎間輸血症候群の発症が否定的で、かつ2児とも成長が順調であった1絨毛膜2羊膜双胎と1児のみ胎児発育不全であった1絨毛膜2羊膜双胎の症例も対象とし、胎盤から絨毛組織を採取、保存し、DNAメチル化プロファイルの作成およびパイロシークエンス法によるDNAメチル化率の定量を行う予定である。
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