研究実績の概要 |
未陣発かつ未破水で選択的帝王切開術で分娩となった2絨毛膜2羊膜双胎の患者から採取した胎盤から絨毛組織を採取し、絨毛のDNAメチル化プロファイルを作成した。対象は2児とも胎児発育が正常であった3症例(6胎盤)と、1児は正常発育であったがもう一方の児は胎児発育不全(FGR)であった2症例(4胎盤)であった。 はじめに、1児は正常発育であったがもう一方の児はFGRであった2症例の絨毛DNAメチル化プロファイルをそれぞれの双胎間で比較し、双胎間でDNAメチル化の程度に有意差を認めるCpG siteを抽出した。さらに2児ともに胎児発育が正常であった3症例では双胎間でDNAメチル化の程度に有意差を認めなかったCpG siteのみを抽出した結果、250ヶ所のCpG siteが抽出された。このうち、1児は正常発育であったがもう一方の児はFGRであった2症例のいずれにおいても、FGR児のほうが正常発育児と比較しDNAメチル化が高かったCpG siteは51ヶ所、一方、FGR児のほうが正常発育児と比較しDNAメチル化が低かったCpG siteは72ヶ所であった。今回抽出された123のCpG siteの絨毛DNAメチル化異常は、胎児発育不全の発症に関連している可能性が示唆された。 次に、2児ともに胎児発育が正常であった3症例において、双胎間で絨毛DNAメチル化プロファイルを比較した結果、1症例以上でDNAメチル化の程度に有意差を認めるCpG siteは9,890 sites存在した。これらのCpG siteの絨毛DNAメチル化変化は、環境の影響によるものではなく、かつ、胎児発育に影響を及ぼすものではないと考えられた。
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