不妊治療の妊娠率向上に向けた着床不全に対する再生細胞を用いた細胞医療モデル

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25861518
• 研究機関: 国立研究開発法人国立成育医療研究センター
• 研究代表者: 菅原 かな 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, 研究員 (10453739)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: 着床不全 / 間葉系幹細胞 / 脱落膜化

研究実績の概要

近年、本邦では少子化が深刻な社会問題となり、生殖補助医療の果たす役割がますます大きくなっている。生殖補助医療による妊娠率改善のためには、形態的に良好な胚を繰り返し胚移植しているにもかかわらず着床に至らない反復着床不全の症例に対する病態解明と検査・治療法の開発が急務である。その原因の多くは子宮の受容性あるいは胚と子宮とのクロストークの異常によるものと推測されている。特に子宮内膜の菲薄化した症例では、体外受精で形態良好胚が得られても、胚移植後に着床に至る可能性は極めて低く、ホルモン剤にも反応不良で、確立された治療法がないのが実情である。そこで本研究では、子宮内膜の菲薄化による反復着床不全に対する細胞医療の可能性を開拓することを目指す。まず、細胞バンク化されたヒト間葉系幹細胞株から子宮内膜様細胞へ効率的な分化誘導法を開発する。さらに、このヒト内膜様細胞をマウス胚と共に免疫不全偽妊娠マウスの子宮に移植して、脱落膜あるいは胎盤形成に寄与するか病理学的に検討する。この第3の細胞（ドナー胚でもレシピエント内膜細胞でもない）が着床に寄与することが明らかになれば、妊娠初期における免疫寛容の確立を研究する実験モデルとしても有用であることが考えられる。

今年度は、子宮内膜組織の再構築の試みとして、前年度に引き続き、子宮内膜組織の再構築ができるかについて、病理組織学的に検討した。また子宮内膜様細胞と胚との観察のみならず、培養上清も回収し、液性因子が及ぼす影響についても検討した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

子宮内膜組織の再構築の試みとヒト子宮内膜様細胞とマウス胚との共培養を順調に行っている。

今後の研究の推進方策

ヌードマウスを用いて、ヒト子宮内膜様細胞に分化誘導したヒト間葉系幹細胞とマウス胚との移植を行い、その着床率・流産率・出産率を評価する。

次年度使用額が生じた理由

3月に手配した試薬が4月に納品されたため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

試薬は既に納品されており、研究は順調に行っている。