研究概要 |
Pendrinノックインマウスを繁殖させた。マウス型(マウスのH723R)では繁殖能が低く、実験を行える程度の数を確保するのが困難であった。ヒト型(Human cDNAを組み込んだもの)は繁殖可能であり、こちらを実験に使用した。Pendrinノックインマウスはすでに解析が進んでいるPendrinノックアウトマウスと異なり、ある程度のPendrinタンパクの機能が残存しており、頸部を傾ける、回旋を繰り返すなどの前庭機能異常は見られなかった。ABRを用いた聴力検査では若年時の聴力においては正常マウスとほぼ同等の聴力がみられた。ヒトでは成長とともに聴力が低下していくため、加齢による聴力変化を現在測定中である。また、前庭機能についてもRoterrodを用いて数値化して解析する予定である。 Pendrinノックアウトマウスでは陰イオン交換タンパクであるpendrinが欠損することによって内リンパのpHが酸性化することが、カルシウムチャネルであるtrpv5/6を抑制し、内リンパの高カルシウム化につながり、難聴を引き起こすことがわかっている。Pendrinノックインマウスを用いてガラス電極を内リンパに挿入しEP(内リンパ電位)とpH, カルシウム濃度を測定中であるが、現時点では統計学的解析をできるまでは数がそろっておらず、さらに実験数を増やして検討する予定である。 Pendrinノックアウトマウスでは内リンパ水腫が認められることがわかっている。若年時のPendrinノックインマウスの内耳組織切片の解析では明らかな内リンパ水腫を認めなかった。現在、加齢による変化を調べるため動物を繁殖中である。
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