メニエール病は難聴、耳鳴を伴う激しい回転性めまい発作を繰り返しながら、徐々に難聴が進行する難治性疾患である。激しいめまい発作の反復により、休職や退職を余儀なくされる場合もしばしば見られ、めまい発作の軽減が患者のQOLに直結する。メニエール病患者でのめまい発作軽減の一手段として、2011年メニエール病治療ガイドラインに経鼓膜換気チューブ留置の有効性が記述されたが、その作用機序は未だよく分かっていない。本研究は、動物を用いた基礎研究、患者さんでの臨床研究の両面から、メニエール病のめまい発作に経鼓膜換気チューブ留置が有効となる理由を探るものである。 本研究計画では、まずメニエール病モデルモルモットの系を作成予定であったが、この系の確立が困難であった。動物を用いての基礎研究の進展が難しかったため、患者での臨床研究に進んだ。メニエール病確実例12例(男性7名、女性5名)に局所麻酔下に経鼓膜換気チューブ留置術を行い、その後のめまい発作の軽減率を観察した(平均年齢40.3歳、鼓膜換気チューブ留置までの平均観察期間11.1カ月)。めまい発作の頻度は著明改善または改善が10例(83.3%)、また聴力閾値は6例(50.0%)で不変であった。めまい発作の頻度が改善しなかった2例は、ゲンタマイシン鼓室内投与を行った。 過去の報告、また保存的治療が奏効しない場合の次の治療として内リンパ嚢開放術と、今回の経鼓膜換気チューブ留置術を比較してみたが、めまい発作制御率には有意差は見られなかった。今回の検討から、難治性メニエール病のめまい発作軽減に対し、経鼓膜換気チューブ留置術の有効性が確認された。本実績の一部は2014年の福岡若手めまい研究会で報告した。
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