研究概要 |
初回治療として手術施行の頭頸部扁平上皮癌患者を対象にして、手術試料の癌部、非癌部より線維芽細胞を培養樹立した。これらの細胞は、CD11b-, CD34-, CD45-, CD90+, FAP+であり、線維芽細胞であることが確認できた。癌部から培養されたalpha-SMA+癌関連線維芽細胞:Cancer-associated fibroblasts(CAF)と非癌部から培養されたalpha-SMA-の線維芽細胞:normal fibroblasts (NF)の機能を比較解析した。 CAFでは共刺激分子のB7H1, B7DCの発現を認めたが、NFでは認められなかった。CD80, CD86, B7H3については両者とも発現を認めなかった。また、CAFはNFに比べてT細胞増殖能の抑制効果が強かった。この抑制効果はCAFとCAFの培養上清の両者で認められた。更に、そのメカニズムを検討するためにIL-6, IL-8, VEGF, TGF-betaのmRNA発現を調べたところ、いずれのサイトカインmRNA発現もCAFで亢進していた。 続いて、それぞれの細胞の培養上清の存在下にT細胞を培養して、T細胞に対するアポトーシス誘導能と制御性T細胞誘導能を調べたところ、CAFの培養上清はNFの培養上清に比べて有意にアポトーシスを誘導した。また制御性T細胞はCAFの培養上清との共培養にて有意に誘導された。 以上のことから、CAFはがん微小環境における免疫抑制機構の一部を担っていることが示唆された。
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