研究課題
昨年までに頭頸部扁平上皮癌手術患者の癌部、非癌部より線維芽細胞を培養して、α-smooth muscle actin(α-SMA)+癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblasts: CAFs)とα-SMA-正常線維芽細胞(normal fibroblasts: NFs)を樹立し、その免疫抑制機能について比較検討した。CAFsはNFsよりT細胞増殖抑制機能が強く、CAFsに発現しているB7H1及びB7DCやIL-6、IL-8、TGF-β、VEGFなどのサイトカインの関与が示唆されたが、本年は、更に症例を増やしてT細胞抑制能を確認した。また、CAFsの培養上清と共培養したT細胞はIL-10、TGF-β、Foxp3遺伝子発現の増強を認め、制御性T細胞の誘導を裏付ける結果となった。更に、CAFsによるT細胞増殖抑制能は、抗B7H1抗体、抗B7DC抗体によるブロックや抗TGF-β抗体による中和によって解除されることを確認したが、症例間で抑制解除の程度は様々であり、T細胞抑制に関与している分子の役割は各症例において様々である可能性が示唆された。また、3つの樹立されたCAFsとNFsのペアにおいてcDNA microarrayを施行し、クラスタリング解析を行なったところ、その発現パターンは様々であった。これらのうち、3つのペアで共通して発現上昇している遺伝子についてpathway解析を行なったところ、白血球遊走、paxillin(細胞-マトリックス接着関連タンパク質)シグナルの経路が活性化していることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
CAFsによるT細胞増殖抑制能の確認から、その抑制機構の解明へと研究が順調に進んでいる。また、3つのペアであるが、マイクロアレイによる網羅的解析も行うことができた。
これまでの主としてCAFsとT細胞との相互作用について解析してきたが、今後はがん微小環境に存在する免疫抑制担当細胞としてtumor-associated macrophages(TAMs)に着目して、CAFsとTAMsの相互関係をin vitroで解析していく予定である。更に、実際の頭頸部扁平上皮癌組織でのCAFsと免疫担当細胞との相互関係を免疫染色法で確認していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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