研究実績の概要 |
昨年まで、癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts: CAF)がT細胞機能に及ぼす影響について検討を行い、CAFが免疫抑制機構の一翼を担っていることを示してきた。本年はCAFとmonocytesの関係について検討した。 頭頸部癌患者の癌組織から樹立したCAFの細胞培養液とCD14+monocyteを共培養したところ、CD68, CD163, HLA-G, CD80, CD86の発現が増強し、M2タイプのmacrophageが優位に誘導されていることが示唆された。更に、CAFの培養液で共培養されたCD14+monocyteはT細胞増殖抑制能が増強し、IL-6, IL-10, ARG-1, TGF-βの遺伝子発現が亢進していた。 これらのことから、CAFが腫瘍微小環境においてT細胞の機能抑制のみならずM2優位な環境を形成することにも関与していると考えられた。 次に免疫組織化学法によって、頭頸部癌組織におけるCAFの浸潤と臨床因子との関連を検討したところCAFの浸潤が強い症例では、tumor-associated macrophage (TAM)の浸潤、特にM2 macrophageの浸潤と相関する結果であった。更に病期や癌組織におけるリンパ管侵襲、血管侵襲とも相関しており、CAFが免疫抑制のみならず、癌の増殖や浸潤にも関与していることを示唆する結果であった。またCAFの浸潤が強い症例では全生存期間や無増悪生存期間が有意に低かった。これらの結果から、CAFを治療ターゲットとした治療戦略の可能性が考えられた。
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