研究課題/領域番号 |
25861528
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
木下 崇 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (00648462)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 唾液腺導管癌 / microrna / マイクロアレイ |
研究概要 |
ヒトゲノム解析研究が終了し、その成果として、ヒトゲノム中には、蛋白をコードしない機能性RNA分子が多数存在する事が明らかとなった。機能性RNAの中で、僅か19~22塩基程度の低分子RNAであるマイクロRNAは、蛋白コード遺伝子に配列依存的に結合し、分解や翻訳阻害により標的となる遺伝子(群)の発現制御を行う機能を有する。また、1種類のマイクロRNAは、数十~数千の蛋白コード遺伝子の発現制御を行う事が報告されている。細胞内では、蛋白コード遺伝子とマイクロRNAの発現がタイトに制御されており、マイクロRNA-蛋白コード遺伝子の発現異常に伴う、機能性RNAネットワークの破綻が癌を含む様々な疾患の発症や進展に関与する事が報告されている。 唾液腺に発生する唾液腺導管癌は、遠隔転移を高頻度で起こす、極めて予後不良な癌の1種である。現在も確固とした治療プロトコールが無く、その治療成績は極めて低い。そこで、本研究では、予後不良な癌のある唾液腺導管癌に対して、マイクロRNA-蛋白コード遺伝子の発現解析から、唾液腺導管癌のRNAネットワークの異常を見出す事を目的とした。 平成25年度は、唾液腺導管癌の臨床検体から、蛋白コード遺伝子の網羅的発現解析を施行した。その結果、extracellular matrix (ECM) pathwayやFocal adhesion pathwayに含まれる遺伝子群が、唾液腺導管癌の癌組織で高発現している事が認められた。これら遺伝子の発現異常は、癌細胞の浸潤・遊走に関与する事が報告されており、唾液腺導管癌の遠隔転移と原因である事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
唾液腺導管癌の臨床検体を用いた蛋白コード遺伝子の網羅的発現解析から、唾液腺導管癌の遠隔転移と原因となり得る遺伝子群を抽出した。これまでに、唾液腺導管癌のゲノム解析は殆んど行われておらず、今回の解析は、唾液腺導管癌の新規RNAネットワークの一端を明らかにした。今回の解析から、唾液腺導管癌で高発現が明らかとなった遺伝子については、免疫染色による他検体の検証が可能となり、今後の研究の方向性が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 本年度は、唾液腺導管癌・臨床検体のマイクロRNA解析を軸にして、唾液腺導管癌において発現異常を認めるマイクロRNAを探索する。これまでに得られた「蛋白コード遺伝子の発現プロファイル」と合わせる事で、唾液腺導管癌に特徴的な機能性RNAネットワークを探索する。さらに、唾液腺導管癌で活性化されている分子経路を見出し、その遮断方法について検討する。具体的には、発現抑制されているマイクロRNAの核酸導入、発現が上昇している蛋白コード遺伝子のsiRNAによるノックダウン、シグナル伝達を阻害する分子標的薬の投与による癌抑制効果について検討する。 (次年度の研究費の使用計画) 唾液線導管癌類似細胞株を用いて、1)発現抑制されているマイクロRNAの核酸導入、2)発現が上昇している蛋白コード遺伝子のsiRNAによるノックダウン、3)シグナル伝達を阻害する分子標的薬の投与を行う。研究費は、核酸・siRNA、分子標的薬剤の購入に充てる。また、成果発表のための論文作成費用や印刷費に使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次に使用するべき物品の金額が当該年度の残金よりも多かったため。 次年度の予算とあわせて物品を購入する予定である。
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