研究課題
唾液腺に発生する唾液腺導管癌は、遠隔転移を来し易く、極めて予後不良な癌である。現在も確固とした治療プロトコールは存在せず、治療方針の検討も未だ十分には行われていない。本疾患については、発生頻度が非常に少ない事、また唾液腺癌の術前組織型診断が困難なことから、臨床検体を用いた解析がほとんど行われていない。近年、ヒトゲノム中には、蛋白をコードしない機能性RNAが多数存在し、転写されている事が判明した。その中で、マイクロRNAに分類されるRNA分子は、蛋白コード遺伝子の発現を負に制御する事から注目されている。1種のマイクロRNAは、数十から数百種類の蛋白コード遺伝子の発現を制御しており、ゲノム中の遺伝子の多くは、マイクロRNAの制御を受けている。本研究では、唾液腺導管癌臨床検体を用いた蛋白コード遺伝子の解析を行い、その上流を制御するマイクロRNA分子ネットワークの探索を施行した。解析の結果、唾液腺導管癌において1)Focal adhesionに分類される遺伝子群が異常発現していること、2)miR-29a/b/cがその上流を制御していることが示唆された。そこで、これらマイクロRNAの発現が抑制されている癌細胞株に、miR-29a/b/cを核酸導入したところ、癌細胞の遊走・浸潤能の顕著な抑制が認められた。この事から、miR-29a/b/cは、唾液腺導管癌における「癌抑制型マイクロRNA」である事が強く示唆された。更に、これらマイクロRNAが制御する蛋白コード遺伝子について検討した結果、miR-29a/b/cは細胞外マトリックスのレセプターの機能を有するintegrinを抑制し、癌細胞の遊走・浸の制御に関与している事が判明した。本研究により、唾液腺導管癌の遠隔転移に関わる分子経路の一端が明らかとなった。
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