本研究は、声の老化とアンチエイジングをテーマとしており、声の老化による機能的・器質的変化の解明と声のアンチエイジングを臨床で行うための基盤確立を目的とした。具体的な内容として、①声が老化した症例(老人性喉頭症例)に関する臨床研究、②健常者を対象とした音声の性差・年齢差に関する臨床的研究、③ラットを対象とした代表的アンチエイジング法であるカロリー制限が喉頭に及ぼす影響の基礎的研究、の3つを実施した。 平成25年度は、主に①と②を進めて③の実験モデルの構築を主に行ったが、平成26年度では、①と②の研究成果を総括しつつ③の実験を実際に進めた。 まず②に関して、デジタルキモグラフィーを用いた健常者における声帯振動の性差・年齢差について英語論文としてまとめた。これにより健常者データが完成したため、それに基づいて老人性喉頭例の高速度デジタル撮像による声帯振動の異常を解明し(①)、その成果から英語論文を作成した。また、これらの臨床的研究を総括して、成果を複数の学会で報告した。 ③については、8週齢のSDラット雄24匹を用いた。4群に分けて、「カロリー制限(炭水化物のみ減らして全体のカロリーを35%減じた)1か月負荷した群」と「通常の餌を1か月投与した群」、「カロリー制限3か月負荷した群」と「通常の餌を3か月投与した群」をそれぞれ組織学的に比較検討した。それぞれの群には片側の声帯に障害を加えて、創傷治癒の違いも検討した。その結果、通常の餌の群に比べて、カロリー制限群では声帯粘膜固有層が有意に増大し、粘膜固有層での創傷治癒が改善したが、筋層には有意な変化を認めず、カロリー制限が喉頭の機能に対して好影響を及ぼすことが与え得ることが解明された。 以上から、本研究を通じて、声の老化におけるヒトでの臨床的特徴が解明され、カロリー制限がアンチエイジングの有効な手法になり得ることが明らかとなった。
|