研究課題/領域番号 |
25861532
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 千里 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60581882)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経科学 / 耳鼻咽喉科学 / 内耳 |
研究概要 |
聴覚および前庭平衡覚の受容器である内耳の障害は、薬物、加齢、騒音など様々な原因で生じるが、多くは不可逆性の障害である。本研究では、内耳障害の予防戦略として、栄養源検知機構であるmTOR(mammalian target of rapamycin)シグナルに着目している。mTORは、細胞内の栄養環境を感知し、細胞の増殖や代謝、生存における調節因子の役割を果たす、セリンスレオニンキナーゼである。mTORC1(mTOR Complex1)阻害剤投与やカロリー制限によるmTORC1シグナルの低下は、マウス個体の寿命を延長させるという報告がある。 本研究で行ったマウス蝸牛器官培養系を用いた予備実験により、アミノグリコシド系薬剤(硫酸ゲンタマイシン)投与による有毛細胞障害を、mTORC1阻害剤(ラパマイシン)が予防する可能性が示唆された。次に、マウス内耳器官培養において、mTORC1の下流シグナルの応答を検出する実験系の確立を目指した。mTORC1の下流シグナルであるオートファジーのモニターが可能であるGFP (green fluorescence protein)-LC3(MAP1LC3, microtubule-associated protein 1 light chain 3)トランスジェニックマウスを導入し、内耳器官培養において、有毛細胞でオートファゴソームが形成されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス内耳器官培養系において、有毛細胞内のオートファゴソームの形成が確認できたことから、mTORC1阻害剤投与および低栄養条件により、mTORC1の下流シグナルが実際に阻害されているかを検出できる可能性が広がった。研究目的の進展は、概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度確立した実験系を用い、mTORC1阻害剤投与および低栄養条件により有毛細胞におけるmTORC1の下流シグナルの応答の低下を確認する。アミノグリコシド系薬剤投与による有毛細胞障害が、mTORC1阻害剤あるいは低栄養条件により予防されうるかをさらに検討を重ねる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の物品費の使用が、予定より少なかったため。 物品費として、培養用器具・試薬、分子生物学用試薬、動物購入・飼育費に使用する予定である。また旅費等については、主として国内・海外の学会発表に使用する予定である。
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