研究課題/領域番号 |
25861535
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
窪田 和 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40547593)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大脳聴覚野 / イメージング / 中枢性耳鳴 |
研究実績の概要 |
内耳障害で感音難聴が生じると、大脳聴覚野が末梢から受け取る情報量が減少する。末梢からの聴覚刺激は周波数マップという音の高さに応じた情報の並びを持ったまま中枢に伝えられ処理される。末梢からの入力が低下すると、大脳聴覚野では神経細胞ネットワークの可塑性が生じ、難聴周波数を担当していた神経細胞の領域において自発発火レートの亢進がみられるなど活動性の変化が生じ、これが耳鳴の原因であると言われている。 本研究では、加齢性難聴モデルマウスであるC57/BL6マウスを用いて難聴前後での周波数マップの変化をフラビン蛋白蛍光法で捉えるとともに、難聴による周波数マップの変化を抑制させるために受動的音響曝露が有効であるかどうかの検討を行っている。 これにより、一度生じるとなかなか改善が難しく難治性である、人間の耳鳴における予防医学として、早期からの補聴器装用など、豊富な環境音曝露の有用性を検討している。 並行して、大脳聴覚野の機能解析として両耳同時刺激による聴覚野の応用、聴覚刺激-視覚刺激の統合機能などについても検討を行っている。 今後、実際の人間(正常聴力者)を被験者として、イヤフォンによる疑似耳鳴音と環境雑音(近接音:ヘッドフォン、離れた音:スピーカー)を用いて、動物では評価困難である距離の違いと耳鳴マスキングに必要な音圧の関連なども検討してゆく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
臨床業務が逼迫し、実験の時間が減少したことと、辞職した実験助手の後任者が決まらずにいるため。コンスタントに実験が出来ないため、手技的にマウスの麻酔深度管理や測定準備のための処置などが安定せず、有用なデータにならないことが増加したことも原因と考える。
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今後の研究の推進方策 |
加齢性難聴マウス、音響刺激マウスの聴覚野応答の計測に関しては、今後も継続してデータの蓄積を行う。 本研究の最終目標は人間における耳鳴の予防~治療であり、今後、実際の人間を被験者とした耳鳴に関連する研究も並行して行う。 耳鳴の無い健聴者を対象とし、イヤフォンで疑似的な耳鳴(8kHz純音、被験者の聴力域値+固定値の音圧)を聴きながら、それをマスキングするために必要なノイズの音圧が、近接音源と一定以上離れた音源で異なるかどうかを検討する。これにより、現在耳鳴治療の主体である補聴器や耳鳴順応療法(ともに補聴器型の器械で耳に近接したところで音を発する)が有効で無かった症例や、機械の装用そのものが不快、装用できないといった症例に対し、環境音による音響療法が従来の耳鳴治療と同様に効果が期待できることの根拠を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験助手雇用のために確保しておいたが、採用が決まらずに持ち越すこととなった。 また、実験頻度が低下したため、使用するマウスの個体数が減少し、マウスの購入費や飼育管理費、薬品費が減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
フラビン蛋白蛍光法での計測には従来通りマウス購入費等として使用する。 また、人間を用いた実験系を構築するために、ヘッドフォン、スピーカー、アンプや制御用のPCなど音源提示機器を購入する予定である。(騒音計・ダミーヘッド・トーンジェネレータ等の高額機器は現有している)
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