研究実績の概要 |
ダハプラチン(一般名:オキサリプラチン)は従来の抗癌剤に対して感受性の低い大腸癌細胞株に強い活性を示し、大腸癌の治療薬としての開発が進められた。本研究ではオキサリプラチンのミセル化薬剤であるダハプラチン誘導体ミセル(以降、NC-4016)を用いて、抗腫瘍効果増強と神経障害軽減の可能性を検討した。抗腫瘍効果を実験1-3にて検討した。実験1では、頭頸部癌cell line(KB,OSC-19,OSC-20,HSC-3,HSC-4)でのオキサリプラチンとNC-4016の抗腫瘍活性をMTS assayにてIC50(50% inhibitory concentration)を検討した。実験2では、KB細胞をヌードマウスの背部皮下に播種し、各薬剤(オキサリプラチン、NC-4016、5%ブドウ糖液)を投与し、腫瘍長径と短径を毎週測定した。神経障害は実験4にて検討した。オキサリプラチン、NC-4016、5%ブドウ糖液の3群にて、薬剤投与前、薬剤投与翌日から14日目で、ラット足底に対するAceton test、cold testにて神経障害を評価した。 Cell lineにおける抗腫瘍効果は従来のオキサリプラチンが、NC-4016より高い抗腫瘍効果を認めた。一方で、マウスにおける抗腫瘍効果は、NC-4016において有意に腫瘍の増大を抑制していた。血漿中のプラチナ濃度は、オキサリプラチンは薬剤投与直後から低下するのに対して、NC-4016は薬剤投与24時間以降も高かった。NC-4016投与時の腫瘍内のプラチナ濃度は、オキサリプラチン投与時の約5倍と高かった。寒冷刺激であるAceton testとcold testでは、オキサリプラチン群においてのみスコアの上昇と通常より高い温度刺激での反応を認めた。これはオキサリプラチンによる急性期神経障害と考えられた。NC-4016群では、これらの急性期神経障害が観察されなかった。ダッハプラチン誘導体ミセル(NC-4016)の高い腫瘍集積性と抗腫瘍効果、急性期神経障害の軽減の可能性が示された。
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