近年、診断、治療に役立つナノデバイスが開発され、頭頸部癌治療においても、そのキードラッグであるシスプラチンを内包したミセル化シスプラチン(NC-6004)が開発された。腫瘍組織に選択的に集積し抗腫瘍効果を高める一方で、既存のシスプラチンで問題であった腎機能障害等の有害事象を軽減させる。今回、腫瘍組織の異常血管を退縮・破綻させるのではなく「修復」させることで、薬剤供給路の確保を目指す新しい治療戦略を目標とした。近年TGF-β阻害剤の少量投与が腫瘍血管正常化作用を示す報告がある。頭頸部癌組織のR-RAS(正常血管で発現)の免疫染色を施行した。腫瘍組織では正常組織に比較してR-RASの発現が低下していた。すなわち異常血管が多く化学療法抵抗性の一因となっていることを認めた。さらに頭頸部癌を移植した担癌マウスにおいて、ミセル化シスプラチン投与群に加えて、ミセル化シスプラチン+TGF-β阻害剤投与群について検討した。TGF-β阻害剤を加えた群では腫瘍内のプラチナ濃度が優位に上昇し、ミセル化シスプラチン投与群に比べてより高い抗腫瘍効果を認めた。以上から、異常血管の多い頭頸部癌に対してTGF-β阻害剤+ミセル化製剤の頭頸部癌での有用性を認めた
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