研究実績の概要 |
癌細胞の浸潤、転移のメカニズムを解明するためにケモカインレセプター(CCR3,CCR4)の発現とその機能に関して研究をすすめていった。 培養細胞の実験から、培養頭頸部癌細胞を用いて、ウェスタンブロッティングやリアルタイムPCRを行い、ケモカインレセプターの発現を確認した。そして、我々が作成したCCR3,CCR4発現ベクターやそれぞれのsiRNAを細胞にトランスフェクションし、その細胞形態の変化、浸潤能、増殖能に関して検討を行った。有意な差がでた結果としては、培養癌細胞株を用いてinvasion assay、wound healing assayを行った結果、ケモカインレセプターをsiRNAにてノックダウンした癌細胞はコントロールに比べて浸潤能、細胞移動能が低下していることを確認した。また、細胞の形態にも変化がみられた。これまでに確認しているケモカインレセプターと細胞接着因子の変化から考えると、原発巣からの離脱(原発巣からの離脱)にケモカインレセプターが関与していることが推定された。さらに、シスプラチンやタキソールなどの抗癌剤耐性を獲得した培養頭頸部癌細胞において、ケモカインレセプターの発現量が増加していることを確認した。このことは再発し、抗癌剤耐性を獲得した癌細胞の浸潤転移能の増強の一因と考えることができる。
また、手術症例の病理組織からケモカインレセプターを免疫染色し、その発現程度と、リンパ節転移の有無、予後、ステージ分類を検討した。腫瘍細胞の中の10%以上がCCR3,CCR4を発現しているものをケモカインレセプター陽性、10%以下を陰性としてそれぞれの群を比較対象した。その結果、ケモカインレセプターの発現と癌のステージ分類、5年生存率において有意な差を見ることができた。臨床的にみても、頭頸部癌の浸潤、転移に大きな関連があることを見出した。
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