蝸牛感覚上皮の発生におけるGSK3 情報伝達系の役割を解明するために、蝸牛器官培養系において薬剤を用いてGSK3 情報伝達系の抑制を行い、表現型の解析を行った。 マウス胎児胎生13日目の蝸牛を取り出しGSK3 阻害剤の存在下に4日間器官培養を行った。GSK3の阻害剤としてはCHIR99021 およびBIO-actoxime を用いた。培養後の細胞配列パターンの表現型を、有毛細胞に特異的なMyosin VI (Myo6)に対する免疫染色を行い共焦点レーザー顕微鏡で観察した。Control 群では内有毛細胞1列と外有毛細胞3列が規則正しく配列するが、GSK3阻害群では約4列に過形成したIHC の異常なパターンが観察された。またGSK3阻害群では、内有毛細胞と外有毛細胞の間の支持細胞にあたる領域の拡大がみられ、柱細胞の増加もしくは他の型の支持細胞の増加が示唆された。今後、内有毛細胞と外有毛細胞の間の領域の細胞の分化や配列形成に、GSK3情報伝達系がどのように関わるのかという点についても興味を持ち、研究を進めて行く予定である。さらに外有毛細胞から柱細胞もしくはその他の型の細胞への分化転換の可能性についても、同様の実験系で検討したいと考えている。 in vitroの実験と並行して、GSK3変異マウスの準備を行っている。GSK3には二つのsubtypeが存在するため、コンディショナルノックアウトマウスと通常のノックアウトマウスの掛け合わせが必要である。表現型の解析は次年度以降となる予定である。
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