前年度までの検討でヒトリンパ球のスギ花粉特異的なIL-31産生機構の解明を試みた。すなわち、①スギ花粉症患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)の約66%はスギ花粉主要アレルゲンであるCry j 1に反応しIL-31を産生すること、②IL-4およびIL-33の添加によって、有意なIL-31の産生増強がみられること、③IL-2の添加では有意な変動はみられないこと、④IFN-γの添加によって、IL-31産生の有意な抑制がみらること、⑤LL-37の添加はIL-31産生に有意な影響を示さないこと、⑥Cryj1特異的なIL-31産生は抗HLR-DR抗体の添加で有意に抑制されること、⑥Cryj1特異的なIL-31産生はデキサメタゾン添加によって濃度依存性に抑制されること、などを明らかにした。本年度は自然リンパ球(innate lymphoid cells)のIL-31産生能について検討した。PBMCよりLinage陰性、CD127陽性細胞、すなわち自然リンパ球を分離した。末梢血由来自然リンパ球をIL-2、IL-33、IL-25を単独あるいは複合して添加し、7日培養後の上清中のIL-31をELISAにて測定した。既報(Bartemes et al. JACI 2014)の通り、IL-2+IL-33の刺激に対して自然リンパ球は強力にIL-5およびIL-13を産生した。一方、本刺激によるIL-31は認めなかった。またPBMCからCD4陽性細胞を磁気ビーズ法にて除去し、同様の刺激によるIL-31産生を検討した。自然リンパ球での結果と同様に、CD4陽性細胞除去PBMCはIL-2+IL-33の刺激に対してIL-5およびIL-13を産生したが、IL-31の産生は少なくともタンパクレベル(ELISA)では確認できなかった。以上の結果より、ヒト末梢血リンパ球におけるIL-31産生はおもにCD4陽性細胞であり、自然リンパ球の関与は否定的と考えられた。
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