研究実績の概要 |
「吃音は聴覚タイミングエラーか?」という仮説を確かめるために、本研究を行ってきた。吃音の興味深い特徴の一つとして、メトロノームなどの外的タイミング合わせると、流暢に話せるようになる。そのため、吃音は「聴覚タイミング障害」と推測できる。聴覚タイミングを「位相同期」という指標を用いて測定する。吃音者の位相同期反応を調べるために、健常成人15名、吃音者15名の脳磁図検査でのN100mの反応を調べた。純音聴覚刺激に対する脳磁図センサの位相同期係数(PLF)は、吃音群の右聴覚野でのα帯域では健常者よりも有意に値が大きかった。吃音頻度とPLFには正の相関を示した。また、両側聴覚野のセンサ間の位相同期度(PLV)は、吃音群のβ帯域は健常群より有意に値が大きかった。拡散テンソルMRIは、従来のT1, T2強調画像とは全く違った性質の画像である。様々な角度の傾斜磁場をかけ、白質線維の中に存在する水分子の拡散異方性を数値にしたものである。拡散テンソルMRIから、Linuxパソコン上で、The FRMIB Software Libraryを起動することにより、拡散異方性FA値を計算を行った。さらに非線形レジストレーションし、標準化を行い、スケルトン化して、白質路を描出を試みた。その結果、吃音群は健常群とは異なる拡散異方性FA値を示すことが分かった。この研究で得られた結果は、英文雑誌に投稿している途中である。
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