研究課題/領域番号 |
25861567
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
若崎 高裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10608871)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / EGFR / CIN85 |
研究概要 |
Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)は頭頸部扁平上皮癌で高頻度に発現し、EGFR signalingが発癌、増殖、浸潤、転移といった癌の進展に大きく関与することは臨床検体による研究および分子生物学的基礎研究により示されている。EGFRに対する分子標的薬(cetsuximabなど)の治療効果は限定的である。その原因として、EGFRシグナル下流での恒常的シグナル伝達などが一因と考えられる。今回の研究では、レセプターの内在化とシグナルの両方を統合しうるアダプター蛋白c-Cbl-Interacting Protein of 85 kDa (CIN85)に着目した。CIN85は様々な細胞に発現し、上流シグナルを統合し下流分子につなぎ機能発現をおこなう。CIN85の特徴的な機能のひとつのEGFRを含むreceptor tyrosine kinases(RTKs)のリガンド結合後の内在化を促進する機能により、内在化後のEGFR分解を促進する腫瘍増勢に負に寄与する因子と考えられてきた。申請者は、CIN85発現量と臨床パラメーターの関係性の解析を行い、進行病期の頭頸部癌組織ではCIN85が高発現していることを見いだし、ヒトの癌においてCIN85発現量と腫瘍進展に関係性がある初めての証拠を示した。頭頸部癌細胞株の実験において、CIN85はTGF-α刺激によるRas活性化およびその下流分子であるc-Raf,MEK,ERKの活性化を促進し、頭頸部癌の持続増殖に必須なc-Mycの発現量を増加、細胞増殖を促進させることを示した。最近の報告では乳がんにおいてCIN85はPI3-Akt経路を通じて腫瘍浸潤能を高めたとの知見が得られた。頭頸部癌にいてもCIN85の高発現が腫瘍浸潤能を高めることを証明しており、分子生物学的機序の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般臨床も行っており安定した研究時間の確保が難しかったことから、細胞培養などの実験は困難でした。予算が希望額よりも減額されており、初年度にマイクロアレイ実験予算を組むのが難しかった。基金されていることから26年度予算を合わせて実験を行う予定です。また、免疫染色の条件設定に時間がかかっていることも実験が遅れている理由です。
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今後の研究の推進方策 |
6月から代表者は所属機関が九州がんセンターに移動し、実験時間を確保できる予定である。移動先にも分子学的実験施設がありそれを利用して実験を行う。必要な部分は外部の研究機関を積極的に利用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付していただいた金額の問題や申請者の実験時間の確保が十分に行えなかったことから、初年度に予定していたマイクロアレイ実験(網羅的遺伝子発現解析)は行っておらず、翌年度予算と合わせて行う方針としたために次年度使用額が生じました。 網羅的遺伝子発現解析を行うが、時間的制約のため本年度も自分で行うことができない場合は外部委託することを検討している。また、その後の確証実験にも試薬が必要と考える。具体的にはmRNAレベルでの確認(quantitative RT-PCR)、蛋白レベルでの解析(免疫染色、フローサイトメトリーなど)にも多くの試薬が必要となると思われる。各種インヒビター(MEK inhibitor, PI3K inhibitor, Src inhibitor)やRNA干渉を用いて増殖系、浸潤系への影響を検討する実験を想定している
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