研究実績の概要 |
Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)は頭頸部扁平上皮癌で高頻度に発現し、EGFR signalingが発癌、増殖、浸潤、転移といった 癌の進展に大きく関与することは臨床検体による研究および分子生物学的基礎研究により示されている。EGFRに対する分子標的薬(ce tsuximabなど)の治療効果は限定的である。その原因として、EGFRシグナル下流での恒常的シグナル伝達などが一因と考えられる。 今回の研究では、レセプターの内在化とシグナルの両方を統合しうるアダプター蛋白c-Cbl-Interacting Protein of 85 kDa (CIN85) に着目した。CIN85は様々な細胞に発現し、上流シグナルを統合し下流分子につなぎ機能発現をおこなう。CIN85の特徴的な機能のひと つのEGFRを含むreceptor tyrosine kinases(RTKs)のリガンド結合後の内在化を促進する機能により、内在化後のEGFR分解を促進する 腫瘍増勢に負に寄与する因子と考えられてきた。申請者は、CIN85発現量と臨床パラメーターの関係性の解析を行い、進行病期の頭頸 部癌組織ではCIN85が高発現していることを見いだし、ヒトの癌においてCIN85発現量と腫瘍進展に関係性がある初めての証拠を示した。頭頸部癌細胞株の実験において、CIN85はTGF-α刺激によるRas活性化およびその下流分子であるc-Raf,MEK,ERKの活性化を促進し、頭頸部癌の持続増殖に必須なc-Mycの発現量を増加、細胞増殖を促進させることを示した。今回の研究でCIN85ノックダウン細胞株を用いて網羅的発言解析を行った。腫瘍進展の分子生物学的機能解析を進めた。後日、最終報告する。
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