研究課題/領域番号 |
25861572
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
永野 広海 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60613148)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経皮免疫 / ホスホリルコリン / コレラトキシン / 粘膜免疫応答 |
研究概要 |
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や多剤耐性緑膿菌などの薬剤耐性菌が蔓延し、また高病原性鳥インフルエンザの広域感染など、その予防と医療経済の観点からもワクチンの開発は急務である。 ワクチンの投与経路には皮下注射などの全身投与と経鼻ワクチンや舌下ワクチンなどの経粘膜投与の2つが代表的であるが、期待されていた経粘膜投与の経鼻ワクチンでは顔面神経麻痺の有害事象が報告された。 有害事象の少ない投与経路が模索されており、近年新たな投与法として経皮ワクチンが注目されている。 その特徴として、他の粘膜ワクチンと同様に接種時に痛みを伴わないこと、また血管が分布していない皮膚の表皮に限局して抗原を投与するため発熱やアナフィラキシーのような副作用が起こらないなどの特徴がある。我々も以前、他誌にCTを抗原とした経皮免疫による粘膜免疫応答に関して報告した。 今回使用した抗原であるホスホリルコリン(以下PC)は、様々な細菌の細胞膜の表面に発現している構成成分であり、これに対する抗体産生を長期間誘導できれば粘膜面において幅広い細菌感染を制御できるのではないかと考え、当教室では以前経鼻投与の粘膜応答に関して報告してきた。 今回我々は、ホスホリルコリンを用いた経皮免疫の血清や口腔を含む粘膜面における粘膜免疫応答に関して、粘膜免疫応答を調査し、ワクチン開発を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
方法:PC200μgとアジュバンドとしてコレラトキシンを、BALB/cマウスの除毛した背部に1回/週×6週間免疫した。唾液にホスホリルコリン特異的IgAの産生をELISA法で確認した。唾液と血清は1回/月の頻度で6ヶ月間測定し、6ヶ月目に頸椎脱臼法で屠殺し、脾臓を採取した。脾臓から抗原特異的リンパ球を採取培養し、サイトカイン(IFNγ、IL-4)を測定した。 結果: PC特異的IgGに関しても、経皮免疫群では、コントロール群と比較して、刺激終了後から6ヶ月までのすべての期間で統計学的に有意に高値であった。PC特異的IgAに関しては、経皮免疫群では、コントロール群と比較して、刺激終了後から5ヶ月までは統計学的に有意に高値であったが(p<0.05 One-factor ANOVA)、6ヶ月の時点で有意差がなくなった(p=0.09 One-factor ANOVA )。唾液中のPC特異的IgAについて、経皮免疫群では、コントロール群と比較して、刺激終了後から6ヶ月までのすべての期間で統計学的に有意に高値であった(p<0.05 One-factor ANOVA)。ただ経皮免疫群のPC特異的IgAは、2ヶ月をピークに減少した。IL-4について、コントロール群は6.4pg/ml、経皮免疫群では36.6pg/mlで、経皮免疫群が統計学的有意に高値を示した(p<0.01 One-factor ANOVA)。IFN-γについて、コントロール群と経皮免疫群ともに検出限度以下であった。 まとめ:以上の結果よりPCを用いて経皮免疫のより血清中のみならず、口腔を含む粘膜面にも抗原特異的IgAを誘導することが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
前述の実験系では、液体の抗原を滴下しているだけであるため、実際のワクチン開発ではデバイスおよびデリバリーシステムの構築が問題となる。近日化粧品メーカーによりマイクロニードルが開発および市販化され、角質を突き抜け皮下組織へのコラーゲン投与のデバイスとして注目されている。我々は上記企業と共同でマイクロニードル内にPC抗原を塗布し、皮下への抗原投与を行い経皮免疫の実用化に向けて推進していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの実験結果の確認のため再実験を行う予定であるが、年度内にスタートができなかったため、マウス、ELISAキット等を購入していない。そのため約50万円の次年度使用額が生じた。 前年度の実験結果の確認実験を行うと同時に新しい経皮免疫用マイクロニードルの開発を行い、それを使用して実験を進めていく計画である。それを行うのに必要な実験動物、ELISA kit、PCR用試薬、MACS用試薬の購入に使用する。
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