研究実績の概要 |
研究課題はヒト小児咽頭扁桃上皮における抗原提示機構と上皮バリア機能との関連を明らかにし小児上気道感染症に対する病態をふまえた治療・予防戦略確立のための基礎研究であり最終年度は(1) 小児咽頭扁桃上皮細胞におけるM細胞を含む抗原提示機構と上皮バリアの関係を検討,病原体認識機構の局在と分布、機能的役割を解明,(2)ヒト小児咽頭扁桃組織におけるDNAおよびmicroRNAアレイを用いた網羅的遺伝子解析の解析が終了し結果の一部を2013年7月に第8回国際扁桃・粘膜バリアシンポジウム(スイス,チューリッヒ)にてポスター発表を行い,国際学術誌に投稿準備中である。また鼻粘膜上皮細胞におけるToll like receptor(TLR)3のアゴニスト処置によるmicroRNAの挙動とタイト結合分子の制御機構に関する検討をEur J Pharmacol.に掲載した(Miyata R. et al., 2015)。さらに小児期に感染するRSウイルス感染後の喘鳴の遷延や気管支喘息発症との関連を予測する因子としてウイルス感染により特異的に誘導されるmicroRNAを明らかとした。その結果を2015年第64回日本アレルギー学会にポスター筆頭演者として発表している。さらにRSウイルスの宿主細胞内での複製機構と気道上皮細胞の宿主免疫応答制御機構の関連を検討し複数の気道上皮細胞株を用いてウイルス感染に伴って誘導される種々のサイトカインがある種の抗菌薬投与によって抑制されることを発見した。このことはこれらの抗菌薬の構成成分に,ウイルス感染に伴って誘導される宿主細胞内のシグナル伝達経路を阻害する機能が存在することを示唆しており国際学術誌へ投稿中あるいは準備中である。以上の結果は第2, 3回日本耳鼻咽喉科感染症エアロゾル研究会,第53回日本鼻科学会,第63回ウイルス学会総会で口頭あるいはポスターにて発表した。
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