研究課題/領域番号 |
25861577
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
榊原 敦子 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (10636533)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 頭頸部扁平上皮癌 / テロメライシン / 放射線感受性 / テロメラーゼ / ウイルス療法 |
研究概要 |
テロメライシンと放射線の併用効果について放射線耐性の頭頸部扁平上皮癌細胞を用いてin vitroの検討を行った結果、それぞれ単独で治療を行ったものと比較して有意に高い治療効果を発揮した。同所性頭頸部扁平上皮癌マウスモデルにおいてもテロメライシンと放射線の併用は、それぞれ単独で行ったものと比較して有意に腫瘍の発育を抑制し、腫瘍が30 mm^3まで増大するのに要した時間は対照群18.1日、放射線群22.9日、テロメライシン群23.2日、併用群30.0日であり、併用によるEnhancement factorは1.39であることから、相乗効果があると認められた。また、マウスから摘出した腫瘍の薄切標本をTUNEL法を用いて評価したところ、併用群におけるTUNEL陽性細胞の割合が単独治療群と比較して有意に増加しており、併用治療によって癌細胞のアポトーシスが誘導されることが示唆された。in vitroにおいても、併用治療によりアポトーシス関連タンパク質であるPARPの開裂が認められた。この機序を解明すため、in vitroでDNA二重らせん修復において重要な役割を担うMRN複合体(Mre11, Rad50, Nbs1)の発現を検討したところ、それぞれのタンパク質の発現はテロメライシンの用量に依存してテロメライシン投与後42時間後より低下した。逆に放射線治療のみを行うと、MRN複合体の発現量は増加した。両者を併用すると、テロメライシン単独投与時と同様にMRN複合体の発現量は抑制された。この結果より、テロメライシンはDNA二重鎖修復に重要な働きを担うMRN複合体の発現を抑制することにより放射線耐性頭頸部扁平上皮癌細胞の放射線感受性を増大させることが分かった。放射線耐性の頭頸部扁平上皮癌の治療は困難で予後不良であるが、テロメライシンを治療に加えることで予後が改善する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたテロメライシンと放射線の相乗効果の有無に関する検討が達成でき、同時にその機序についてもおおむね解明することができた。この研究結果をもってテロメライシンのヒト頭頸部扁平上皮癌に対する臨床応用への道筋をつけることができただけではなく、アデノウイルスをはじめとしたウイルス治療が放射線治療との相乗効果を発揮するという基礎的裏付けができ、今後の頭頸部扁平上皮癌に対するウイルス治療が発展するための重要なデータとなった。
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今後の研究の推進方策 |
テロメライシンはDNA修復機構の阻害という同じ機序で抗癌化学療法薬の感受性を増強させる可能性があり、これについても検討を行う。また、テロメライシンに放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療法についても検討する。 現在海外で進行中の臨床第II相試験の結果を踏まえて、国内における早期臨床試験のプロトコールの立案と規制当局への対応を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験プロトコールの適正化により実験用マウスの必要数が減少したため、マウス購入費および関連試薬代金が減少した。 平成26年度に化学療法薬とテロメライシンの併用実験を加えて行い、テロメライシンを用いた集学的治療法の可能性について検討を行う。 また、テロメライシンを用いた早期臨床試験の計画作成に当たっては、マンパワーの確保が必要となる見込みであり、さらに論文・学会発表等を通じてテロメライシンの有用性についてのコンセンサスを得る必要がある。このため、これらにかかる人件費・旅費について平成25年度分を次年度使用額として平成26年度に使用する計画である。
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