研究概要 |
現在までに名古屋大学医学部のウイルス学講座との共同研究において、複数の感染経路 (系耳介、系角膜、鼓室内、脳内、静脈内) を検討することによりマウス生体内における単純ヘルペスウイルス (HSV) 感染後のアポトーシス抑制能を報告してきた (Arch Virol, 2010、Acta Otolayngol, 2011)。HSV を中耳腔に注入した際には、難聴、めまいの症状とともに内耳に多数のアポトーシス細胞が検出され、難聴と内耳のアポトーシス細胞の何らかの関連が示唆された (Acta Otolayngol, 2011)。突発性難聴の際に内耳でアポトーシスがおこり聴力障害に関与していると推定されており、アポトーシスを抑制することで聴力予後が改善することを根拠に、Auris Medical 社のアポトーシス抑制ペプチド(AM-111)を用いた臨床治験がEU を中心に行われている。今回我々のウイルス性難聴モデルを用いてアポトーシス抑制ペプチドを注入したが、明らかな臨床症状の変化は観察されなかった。HSV感染により前庭神経炎様の症状も観察されたが、アポトーシス抑制ペプチドによりとくに変化は認められなかった。
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