研究課題/領域番号 |
25861581
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
杉山 庸一郎 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (50629566)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 喉頭科学 / 神経生理学 / 嚥下 |
研究概要 |
嚥下障害治療の基礎的理論的背景を確立することを目指し、喉頭挙上筋の電気刺激による嚥下関連ニューロンの活動性の変化を解析することで嚥下生成神経ネットワークの可塑性の有無を解明することが本研究の目的である。そして、その結果を元に、嚥下リハビリテーションの効果を上昇させる臨床機器の開発につなげることが最終的なゴールである。研究代表者の過去の研究から、嚥下関連ニューロンは延髄に広く分布していることが分かっているが、慢性動物実験において嚥下時の活動が詳細に観察できた領域は延髄腹外側の領域であった。この領域は呼吸生成神経ネットワークとオーバーラップしており、その多くで呼吸性活動が同時に観察された。つまり、呼吸活動に同期する嚥下関連ニューロンの解析が多くを占めることとなった。従って急性実験の対象となる領域はそれと比較すべく延髄腹外側の呼吸性活動を呈するニューロン群ということになる。従って急性実験においては延髄腹側呼吸ニューロン群の嚥下時の活動性の変化とその分布を検討した。その結果、さまざまなタイプの呼吸関連ニューロンが記録されたが、それらはすべて嚥下時に活動性を変化させ、嚥下生成および制御に寄与することが分かった。また、その分布は延髄腹外側の疑核から後顔面神経核へ続くコラムを中心に分布していた。この結果により、嚥下生成神経ネットワークは呼吸生成神経ネットワークを共有していることが強く示唆され、この領域のニューロンに対し、嚥下時の活動を無麻酔意識化の動物で解析する理論的背景が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は延髄の嚥下関連ニューロンの喉頭挙上筋電気刺激による活動性や分布の変化を解析することによってその可塑性の有無を検討することである。そして、慢性実験、急性実験の比較によりその本質的なパターンジェネレーターへの影響を考察することも重要な課題である。なぜなら、嚥下運動によるフィードバックの影響を考慮しなければその嚥下生成ネットワークの可塑性への本質的な解明には至らないからである。平成25年度の研究により、嚥下関連ニューロンの延髄腹外側領域での記録が可能であること、そして急性実験においてもその領域における嚥下関連ニューロン活動の解析の重要性が示された。従って、慢性実験における可塑性の解析までは至っていないが急性実験の嚥下関連ニューロンの活動性の解析や分布、慢性実験の遂行の基盤は確立したため、予定している達成度に比較的近いレベルに到達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度の結果を元に、慢性実験における喉頭挙上筋の電気刺激による嚥下関連ニューロンの活動性解析を進める。また、急性実験においては他領域の呼吸関連ニューロン、例えば橋の呼吸関連ニューロンに対し、嚥下生成神経ネットワークにおける影響を追加して解析する。もし、嚥下生成神経ネットワークが延髄を超えて橋の呼吸生成神経ネットワークをも共有しているのであれば、延髄腹外側領域を中心とした解析だけでは不十分だからである。また、急性実験において嚥下時の橋呼吸中枢の重要性が明らかになれば、慢性実験でもこの領域の検索は追加検討する。上記追加実験により、さらに嚥下関連ニューロンの検索範囲を限定し、効率的な解析を試みる。
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