研究課題/領域番号 |
25861582
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岡安 唯 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (10596810)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨導超音波 / 超音波知覚 / シスプラチン / モルモット |
研究概要 |
モルモットを用いて骨導超音波によるABRの測定を行った。これまでの骨導超音波の動物実験では蝸電図の報告はあるもののABRを測定した報告はない。蝸電図の測定では気管切開や中耳骨包を開窓する必要があり、モルモット1個体につき1回限りの測定に制限される。ABRの測定が可能になることで、これまで不可能であった同一の個体での内耳障害前後の聴力変化を測定することが可能になる。ABRの測定は振動子からのアーチファクトの影響で測定が困難であった。我々は振動子の接触部位を設置電極と可能な限り遠ざけることや、電極のリード線のノイズを防止すること、振動子を改良して安定して耳後部に接触圧できるよう工夫することで、アーチファクトが軽減され、数体の個体で再現性をもってABRを測定することに成功した。ABRの測定が可能になることで、これまで不可能であった同一の個体について薬物投与や音響負荷前後の聴力変化を測定することが可能になる。シスプラチン投与による内耳障害と骨導超音波聴力の関係をABRによって評価することで、骨導超音波の知覚メカニズムが、我々の仮説「骨導超音波は内有毛細胞で知覚され、その知覚に外有毛細胞が関与しない」が明らかになることが期待される。 H25年度はモルモットに軽度の内耳障害をおこさせるために、シスプラチンを4-8㎎/kgを1回腹腔内投与し、気導閾値と超音波閾値の関係を測定した。気導音についてはシスプラチンを8㎎/kg投与すると約90%の個体で気導音のABRの閾値上昇が得られることがわかった。現在はシスプラチン投与後の内耳における内外有毛細胞の障害の程度を調べる為、組織標本の作製を行っている。 以上のように今年度の研究成果は、骨導超音波の知覚メカニズムの解明に役立つと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は内耳の内外有毛細胞の障害が確認できるレベルの組織標本を作製することを計画していたが、現状ではコルチ器に固定液が十分到達していないと考えられ、内外有毛細胞の障害を十分には評価ができていない。固定液を4%PFA固定液から1/2カルノフスキー固定液に変更したり、灌流固定後の浸漬固定時間を延長することや、灌流固定後蝸牛を取り出し、蝸牛の骨格の一部に穴開けて固定液を注入する手法など組織の固定方法を改良している。組織標本の作製や内耳の組織学的な評価を行なう点は遅れているが、骨導超音波の振動子の改良しながら、骨導超音波でABRの測定を行うという課題は達成できたので、この点に関しては、計画が順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に成功したモルモットを用いて骨導超音波の聴力をABRで測定する技術を利用して、内耳障害と骨導超音波の聴力との関係について調べる。平成26年度にはシスプラチンの投与量を12㎎/kg以上に増量し、内有毛細胞も障害させた後の骨導聴音波聴力の変化をABRで調べる。また、内耳の組織標本の固定の問題をクリアし、内有毛細胞障害と骨導超音波聴力の関係を組織学的調べ、内有毛細胞の障害は骨導超音波聴力を悪化させるという仮説を証明する。内有毛細胞障害が不十分である場合はシスプラチンを内有毛細胞障害性の強い薬剤(カルボプラチン)に変更する。内耳の有毛細胞を評価できる組織標本の作製が困難でる場合は外部に協力を依頼することも考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
内耳の組織標本作成に計画よりも遅れが生じたため、実験動物の購入数が計画よりも少なくなり、支出が小さくなった。 本年度の実験動物の購入費用に使用する。
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