研究概要 |
好酸球性副鼻腔炎は、鼻副鼻腔粘膜に著明な好酸球浸潤を来たし、内視鏡下鼻内手術後にも再発を繰り返す難治性副鼻腔炎である。好酸球性副鼻腔炎における再発に関与する因子を明らかにする事を目的に研究を行った。 慢性副鼻腔炎術後における客観的な炎症の評価として、内視鏡下鼻内手術後41症例において、携帯型NO(一酸化窒素)濃度測定モニター(Nobreath, Bedfont社)を用いて鼻呼気NOを測定するとともに、上顎洞粘膜の粘液線毛機能の評価として、上顎洞内にサッカリン顆粒をおき甘みを感じるまでの時間を測定した(サッカリンテスト)。その結果、NOを過剰産生している症例では粘液線毛機能機能は低下しており、またNOの産生が低下している症例においても低下が認められ、決定係数は低いが優位な二次回帰曲線が得られた(R2=0.173, p=0.027)。また、初回症例に限定した場合も同様の結果が得られた(R2=0.260,p=0.017)。この結果からは、NOが過剰産生している症例では、炎症に加えてNOによる上皮細胞障害により粘液線毛機能が障害されていると考えられ、低下している症例は、主に副鼻腔炎そのものによる上皮細胞障害により粘液線毛機能が障害されていると考えられた。粘液線毛機能の点からは適度なNOの産生が重要である事が判明した。 また、Th細胞のバランスと各Th細胞サイトカインを検討するため、慢性副鼻腔炎症例において鼻茸もしくは副鼻腔粘膜を採取後、直ちに液体窒素にて凍結して-70℃にて保存し、本研究の登録症例とした。採取した組織よりmRNAを抽出し、転写因子やTh細胞が産生するサイトカインについてリアルタイムPCRにて解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
慢性副鼻腔炎症例の登録の蓄積や、登録症例の内視鏡下鼻内手術の術後経過をさらに調査するとともに、採取保存している検体を用いて、各転写因子(FOXP3, GATA3, T-bet, RORγt)、各Th細胞が産生するサイトカイン(IL-5,IL-13,IFN-γ, IL-10, IL-1β, TGF-β, IL-17)のmRNAをリアルタイムPCRにて解析する。
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