研究課題/領域番号 |
25861604
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
安田 俊平 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (50534012)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 遺伝子 / 遺伝性難聴 / Whirlin / 選択的スプライシング |
研究概要 |
ヒト難聴発症の責任遺伝子であるWhirlinは、タンパク質相互作用を仲介するスカフォールドタンパク質の1種である。本研究はWhirlin の2種のアイソフォームであるLongおよびShortのサブタイプの機能を明らかにすること、およびアイソフォーム特異的に相互作用するタンパク質の機能を明らかにすることを目的に各種実験を実施し、本年度は以下に示す結果を得た。 1.Whirlinアイソフォーム特異的マウス変異体を樹立:WhirlinのLongおよびShortアイソフォームの発現を詳細に解析するため、蝸牛由来のRNAのRNA-seq解析を行った結果、両アイソフォームのサブタイプは、ともに第4番染色体63,429,118-63,429,086領域のゲノム配列のスプライシングによるサブタイプであると判断された。また、RT-PCRによって内耳の蝸牛・前庭にはすべてのサブタイプが発現することを実証した。現在CRISPR/Cas9を用いてこの領域を欠失するマウスの作出を試みている。 2. Whirlinの各アイソフォームと相互作用するタンパク質の探索・同定:WhirlinのLongおよびShortアイソフォームともに転写・翻訳されるプロリンリッチ領域および第3PDZドメインを含むC末端側の配列をBaitとし、酵母2ハイブリッドスクリーニングを実施した。その結果、得られたクローンのうち、7種のタンパク質との相互作用が確認された。それらのタンパク質について、各組織におけるmRNAの発現を確認した結果、Limk2遺伝子のアイソフォームのうち、Limk2cが、内耳において発現することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、1) Whirlinアイソフォーム特異的マウス変異体を樹立、2) Whirlinの各アイソフォームと相互作用するタンパク質の探索・同定、および3) Whirlinアイソフォーム相互作用タンパク質欠損マウスの作製を目的に研究を実施した。このうち、Whirlinアイソフォーム特異的マウス変異体の樹立においては、詳細な発現解析によって変異導入のターゲットとなるサブタイプ特異的なゲノム(エクソン)領域を同定することができた。また、酵母2ハイブリッドスクリーニングによる新規Whirlin結合タンパク質の同定については、新規のWhirlin結合タンパク質の同定に成功し、それら同定したWhirlin結合タンパク質はほとんど分子生物学的な解析がなされておらず、その中でも内耳で発現が確認されたLimk2は有毛細胞で機能する新たな分子として期待している。このように本研究は目的通りに研究が遂行され、有用な成果を得ることができたが、本研究の主要な目的であるマウス変異体の樹立には至らなかった。この理由は、計画段階で目指していたENUミュータジェネシスライブラリーのスクリーニングから、より迅速な変異マウス作製法であるCRISPR/Cas9を利用したシステムに切り替えたためであり、現在、この手法を用いて変異マウスの樹立を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の主要な目的は、WhirlinアイソフォームのサブタイプおよびWhirlin結合タンパク質をコードする遺伝子の変異マウスの樹立であり、以下の実験系によって研究を推進する。 1. Whirlinアイソフォームのサブタイプ特異的マウス変異体の樹立と機能解析:CRISPR/Cas9システムにより、サブタイプ特異的スプライシング領域である第4番染色体63,429,118-63,429,086領域の両端近傍のPAM配列をターゲットにゲノム編集を行い、この領域を欠損したマウスを作製する。作製したマウスは、前庭機能の解析、聴性脳幹反応(ABR)の測定、および電子顕微鏡を用いた内耳有毛細胞の組織学的解析を実施し、サブタイプの機能を調査する。また、サブタイプ特異的配列を抗原とした抗体を作製し、有毛細胞におけるサブタイプの局在を明らかにする。 2. Whirlin相互作用タンパク質の同定とマウス変異体の樹立:酵母2ハイブリッドスクリーニングを継続して行い、発現解析および相互作用解析によりマウス変異体の作製のためのターゲットを絞り込み、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集によってノックアウトマウスを作製する。作製したマウスは、1と同様に表現型解析を行うとともに、Whirlin変異体と交配し、2重変異体を作製する。作製した2重変異体は表現型解析、および発現解析によって遺伝子間相互作用の検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品購入時の割引率が想定以上であったため。 遺伝子およびタンパク質の発現を確認するための試薬類および消耗品の購入費、抗体の作成費、マウスの遺伝子改変手数料および飼育費、論文作成時の英文校閲と投稿料、および学会参加費に使用する。
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