老化に伴って発生頻度が高くなる加齢性難聴に対するミトコンドリアDNAの遺伝的背景を明らかにするのを目的として本研究を施行した。酸化ストレスと老化の関係が次第に明らかになるにつれ,加齢性難聴も発症の機序が少しずつ老化の側面から明らかになって来た。老化と強いつながりを持つミトコンドリアDNAの遺伝的な関連性を明らかにし,加齢性難聴の発症機序の解明へとつなげることを計画した。すでに聴力図データと臨床データを添付した対象者約300名の血液とそこから抽出したDNAを有していたが、さらにそのサンプル採取を進行した。これらを用いて1)代表的なmtDNA変異の網羅的解析 2)ハプログループ解析 を施行した。 対象者を難聴群とコントロール群にWHOの定義に従って分類し、各群での代表的なmtDNA変異の出現頻度を検討した。つぎに両群でのハプログループ頻度をcase-control studyを施行し比較・検討した。現在統計的な処理を実行し、有意な多型を解析中である。 また同時進行として、老化と密接な関連を予測されるApoEの多型にも着目し、realtime PCRを用いて、rs7412とrs429358の解析を施行した。同様に難聴群と良聴群に分けたcase-control studyからは有意な差異を認めなかったものの、ゲノタイプE4が良聴群に多い傾向を認めた。サンプルの母数を多くすることで有意となる可能性も考慮し、今後さらなる検討課題とすることを考えた。
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