研究課題/領域番号 |
25861607
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山崎 博司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 医員 (80536243)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 人工内耳 / 内耳奇形 / 聴性脳幹反応 |
研究概要 |
軽度の内耳奇形では、蝸牛神経線維は蝸牛に分布しているが、高度内耳奇形であるcommon cavity型内耳奇形では、解剖学的な蝸牛と前庭の区分が不明瞭であり、画像所見から蝸牛神経線維の分布を予測することは困難である。そこで、申請者はcommon cavity型内耳奇形5例の術中electrically evoked auditory brainstem response (EABR)の結果を検討し、電気生理学的手法を用いて蝸牛神経線維の分布を検討した。Common cavity型内耳奇形の前下方に設置された電極を刺激した時のみ聴性脳幹反応が観察されたことから、common cavity型内耳奇形では、蝸牛神経は均一に分布するのではなく、発生学的に蝸牛に分化する予定であったと考えられる前下方腔に集中していると考えられた。聴性脳幹反応が得られた電極に割り当てられた周波数でのみ良好な聴力閾値が得られることから、行動学的にもEABRの結果の有用性が裏付けられた。興味深いことに、EABRで聴性脳幹反応を認めた電極の割合は、35%から81%と症例ごとにばらつきが大きく、術前のCTやMRIを用いた画像評価では、その割合を予測することは困難であった。最終的にcommon cavity型内耳奇形の5症例は、EABRで聴性脳幹反応が得られた電極を主に使用するプログラムを使用することで、高度内耳奇形であるにもかかわらず、全例で会話音域で良好な装用閾値を得ることができた(Yamazaki et al. Otol Neurotol 2014 in press)。高い人工内耳装用効果を得るためには、人工内耳で効率よく蝸牛神経線維を刺激することが必須であり、蝸牛神経線維の分布領域を電気生理学的に評価し、EABRの結果に基づいたプログラムを作成することが必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は、既にcommon cavity型内耳奇形、incomplete partition type 1型内耳奇形それぞれ5例と、蝸牛神経管狭窄症例の4例について、術中EABR検査を行い、その結果を一部論文として発表するとともに、残りのデータに関しても論文を作成中である。このことから、聴覚神経回路の比較的低次の機能評価に関しては、予定通り解析が進んでいる。 一方、人工内耳装用者における高次脳機能評価のための脳波、near infra-red spectroscopic topography(NIRS)に関しては、現在検査バッテリーのセットアップ中で、コントロール症例である健聴者の検査が未施行の状態で、こちらは研究が予定よりも遅延している。これは、NIRSの前実験で、純音や単音節等の単純な音刺激では脳血流の変化を検出できなかったため、刺激の提示方法や結果の解析方法に関して条件検討が必要となったからである。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、進行が遅れている脳波、NIRSを用いた人工内耳装用者の高次脳機能の評価を中心に行う。H25年度に行ったNIRSの前実験では、純音や単音節等の単純な音刺激では脳血流の変化を検出できなかったため、単語や文章等のより複雑なタスクでより広範な脳領域の賦活が必要であると考えられる。まず、成人ボランティアを用いたコントロール実験で条件検討を行う。当初の方針では、音刺激に対する聴覚野や聴覚連合野の機能評価を行う予定であったが、過去のNIRSや脳血流ドップラー研究では前頭葉の言語野を評価しているものが多く、言語野も評価のターゲットとして高次脳機能の評価を行う。
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