研究課題/領域番号 |
25861609
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
横田 陽匡 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60431417)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 虚血性網膜症 / 神経保護 / 分散ヘスペレチン / 糖転移ヘスペリジン |
研究概要 |
本研究は、糖転移ヘスペリジンと分散ヘスペレチンの強力な抗酸化作用に着目し、これらが糖尿病網膜症などの虚血性網膜症に対する有効な治療法となりうるかを検討する。平成25年度に行った我々の検討では、分散ヘスペリジンが網膜虚血再灌流モデルにおいて抗酸化作用と抗炎症作用を発揮し、神経節細胞を保護することを確認した。具体的には、網膜虚血再灌流後7日目に採取した網膜に対して、神経に特異的な抗体を用いて免疫染色を行い、神経節細胞数を定量した。すると分散ヘスペレチンを毎日腹腔内投与したマウスでは、毎日生食を投与したマウスと比較して有意に神経節細胞数が保たれていた。次に酸化ストレスをDHE染色を用いて定量した。分散ヘスペレチンを腹腔内投与したマウスでは、生食を投与したマウスとして比較して、虚血再灌流刺激による活性酸素の産生が減少していた。また、マイクログリアは網膜での炎症反応において重要な役割を果たしているが、分散ヘスペレチンはマイクログリア由来の炎症性サイトカインを抑制する事により抗炎症反応を発揮する事を明らかにした。TNF-alphaやIL-1betaは代表的な炎症性サイトカインで、糖尿病網膜症の発症や進行、さらに糖尿病黄斑浮腫といった視力に大きな影響を及ぼす病態の形成に関与していることが報告されている。我々の検討により培養マイクログリアと網膜での両検討で、分散ヘスペレチンの血中代謝産物が炎症性サイトカインを劇的に抑制することを確認した。この結果から分散ヘスペレチンが、現在行われている抗VEGF療法に匹敵する効果を発揮できると考えられる。以上の結果をまとめて近日中に論文を投稿する予定である。近い将来に臨床研究に発展できるよう取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に経過している理由として、平成25年度から実験助手が配属された事により、日常的にRT-PCRなどの定量が行いやすくなった事が上げられる。また糖転移ヘスペリジンではなく、分散ヘスペレチンが想定していたより、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を発揮したため、実験結果がある程度安定して得られた事により、実験が順調に経過したと考えられる。また旭川医大眼科学講座には、複数名の大学院生が在籍しているため、動物モデルを共有する事ができる。これも研究が概ね順調に経過した要因であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、糖尿病網膜症をはじめとする虚血性網膜症での神経変性に対する糖転移ヘスペリジンと分散ヘスペレチンの効果を検討してきたが、今年度は同様のモデルを使用して血管病変に対して、これらが効果を発揮するかを検討する。また抗酸化作用や抗炎症作用のみならず、オートファジーに対する作用を検討する。オートファージーは細胞内の環境維持に必須な要素であるが、種々の神経変性においてオーロファジーの調節不全の関与が指摘されている。糖転移ヘスペリジンと分散ヘスペレチンがオートファージーの調節不全を矯正できるかどうかを明らかにする。 現在、虚血性網膜症での検討を行っているが、本研究の結果は網膜のみならず脳に対しても応用する事ができると考えられる。本研究の結果を公表し、同じく神経変性疾患であるアルツハイマー病などに対する応用も促したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、抗体を用いた免疫染色やウェスタンブロットで炎症性サイトカインの定量を行う予定であったが、RT-PCRを使用する事により、ある程度結果を見てから、蛋白定量を行なうことによりコストの削減に繋がった。それにより次年度使用額が生じた。 翌年度に関しては、オートファージーに関する研究を行うので、次年度使用額を利用して抗体の購入をする予定である。おそらく複数の抗体の購入が必要になると考えられるため、その購入費を補充する。
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