研究課題
本研究は糖転移ヘスペリジンと分散ヘスペレチンの協力な抗酸化作用に着目し、これらが重大な視機能障害を惹起する糖尿病網膜症に対して有効な治療法になりうるかを検討した。糖尿病網膜症は発症までに長期間を要することから、網膜虚血再灌流モデルを代用した。網膜虚血再灌流モデルでは、糖尿病網膜症と同様に神経網膜の変性、さらにその後網膜血管変性病変がより短期間で観察される。本研究では、分散ヘスペレチンの全身投与(腹腔内投与)を行い、病態を抑制するかを検討した。結果として分散ヘスペレチンは、網膜虚血再灌流で惹起される活性酸素の産生と炎症反応を抑制し、さらにアポトーシス関連分子であるカスパーゼの活性化を抑制することを明らかにした。また網膜には血液網膜関門が存在しているため、神経網膜内に免疫担当細胞であるミクログリアが常在する。ミクログリアは網膜内における炎症反応に重要な役割を果たしていて、糖尿病網膜症の発症にも深く関与していると考えられている。そこで分散ヘスペレチンが活性化したミクログリアに対してどのように作用するかを検討した。培養ミクログリアをグルクロン酸抱合型ヘスペレチン(ヘスペレチンは生体内でグルクロン酸抱合をうける)で前処理し、LPSで培養ミクログリアを活性化させたところ、前処理をしていないミクログリアに比べて炎症性サイトカインの産生が有意に抑制された。よって分散ヘスペレチンを全身投与することにより、糖尿病網膜症における酸化ストレスと炎症反応が抑制され、網膜が保護される可能性が示唆された。最終年度は以上の結果を論文にまとめることに多くの時間を費やし、最終的にJapanese Journal of Ophthalmology に受理された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Japanese Journal of Ophthalmology
巻: 60 ページ: 51-61
10.1007/s10384-015-0415-z.