研究課題/領域番号 |
25861611
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
尾崎 拓 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70621069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 正常眼内緑内障 / 網膜神経節細胞 / グルタミン酸輸送体 / 虚血・再灌流 / カルパイン / ミトコンドリア / アポトーシス誘導因子 AIF / 細胞死 |
研究実績の概要 |
今年度は、正常眼内緑内障モデルであるグルタミン酸輸送体欠損マウス(GLAST KO マウス)を用いて、網膜の神経節細胞死にミトコンドリアカルパインとアポトーシス誘導因子AIFが関与しているのかを評価した。その結果、3ヶ月齢のGLAST KO マウスの網膜では神経節細胞および双極細胞のアポトーシスが観察された。さらに免疫組織化学的手法にて、網膜神経節細胞の核内にAIFが蓄積していることが確認された。また生化学的解析により、3ヶ月齢のGLAST KO マウスの網膜ではミトコンドリアカルパインが活性化していることが分かった。これらの結果より、グルタミン酸輸送体が欠損した網膜では、少なくともミトコンドリアカルパインとAIF依存的な神経節細胞死が起こっていることが示唆された。しかしながら問題点として、食殺や不妊などによりまとまった数のGLAST KO マウスを確保することが非常に難しく、有意差検定を実施できるデータ数には達していない。従って、来年度も引き続きGLAST KO マウスの繁殖に努めて、有意差検定ができるマウスの数を確保したい。
また今年度は、交付申請書の「研究計画・方法 [平成26年度]」に記載した虚血・再灌流モデルに対するミトコンドリアカルパイン阻害ペプチドの効果を調べた。その結果、ミトコンドリアカルパイン阻害ペプチド点眼群では、①TUNEL陽性神経節細胞数の減少、②逆行性トレーサーであるフルオロゴールドで染めた神経節細胞の数の保護(網膜フラットマウント解析による)、③網膜電図におけるa波およびb波の振幅低下の抑制、④AIFの限定分解の阻害、などが観察された。従って、ミミトコンドリアカルパイン阻害ペプチドによって神経節細胞死が抑制され、網膜の機能が保持されていることが分かった。これらの結果は来年度中に論文にまとめて国際誌に投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正常眼内緑内障モデルであるグルタミン酸輸送体欠損マウスにおいて、食殺や不妊などにより有意差検定を実施できる数のGLAST KO マウスを確保できていないため、当初の研究計画よりはやや遅れている。しかし虚血・再灌流モデルに関しては、研究成果を論文にまとめている最中であるため、研究計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画としては、グルタミン酸輸送体欠損マウスにおける網膜神経節細胞死に対して、ミトコンドリアカルパイン阻害ペプチドの硝子体内投与または点眼投与が効果的か否かを、形態学的、生化学的、分子生物学的および電気生理学的に評価する。グルタミン酸輸送体欠損マウスの繁殖については、飼育ケージに遊具を設置したり、野生型マウスを里親にしたり、餌を変えたりするなど出来る限りの工夫を施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
正常眼内緑内障モデルであるグルタミン酸輸送体欠損マウスについて、不妊や食殺などにより当初の計画通りに繁殖できず、それに伴って実験に費やす予定であった試薬・消耗品費が過剰に余ったため。来年度は当マウスの繁殖に努め、研究計画の遅れを取り戻す。
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次年度使用額の使用計画 |
一部は学会発表のための旅費に使用する予定であるが、繰り越し金のほとんどは試薬・消耗品費に充てる予定である。
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