当初は、ラットやマウスの緑内障モデルを用いた研究計画を立案していたが、実施結果より、緑内障モデルで細胞死に至るような極端な状態の網膜神経節細胞における遺伝子導入は困難であることが判明し、研究計画通りには進める事ができなかった。そこで、計画の一部変更を行い、医学研究において重要な実験動物であるブタの網膜の組織培養法と遺伝子銃による遺伝子導入法の開発に着手し、ブタの網膜神経節細胞の形態分類とブタの網膜神経節細胞内のシナプス分布の解析を行なった。網膜神経節細胞の形態分類には、CMV-EGFP-Fプラスミドを用い、網膜神経節細胞内のシナプス分布には、興奮性ポストシナプスマーカーである、CMV-PSD95-GFPプラスミドを用いた。特にブタの網膜神経節細胞のうち、網膜の内網状層に二層の樹状突起を伸ばすbistratified retinal ganglion cellsに注目して解析を行なった。スターバーストアマクリン細胞のマーカーであるChAT抗体とGFP抗体との共染色により、ブタの運動方向選択性の網膜神経節細胞候補を形態学的に同定し、それ以外にも数種類のbistratified retinal ganglion cellsがブタに存在する事を発見した。医学上重要なブタの網膜神経節細胞の形態分類については、現在まで1報しか報告がなく、特に、bistratified retinal ganglion cellsの形態分類については、この論文では行なわれていないため、ブタの運動方向選択性の網膜神経節細胞も報告されていないため、本研究の成果は非常に重要だと考えられる。現在、これらの内容を論文にまとめるため準備を行なっている。
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