研究実績の概要 |
HTLV-1ぶどう膜炎の分子標的を検索するために、眼内組織にHTLV-1感染が及ぼす影響についての研究を行った。網膜色素上皮細胞は血液眼関門柵を形成する重要な眼内組織で、その位置や役割からHTLV-1ぶどう膜炎の発症に深く関与していると考えられるため、網膜色素上皮細胞にHTLV-1ウイルスが接触することで生じる炎症性変化を調べた。 HTLV-1感染細胞株と網膜色素上皮細胞を共培養しHTLV-1が網膜色素上皮細胞に接触することで惹起される炎症性変化について、共培養上清を回収して炎症性サイトカインおよびケモカイン産生を測定した。網膜色素上皮細胞とHTLV-1感染細胞が直接・間接接触することで、炎症性サイトカインIL-6、IL-8の産生が著しく上昇する一方、IL-10, TNF-α, IL-1β, IL-12p70, の変化はみられなかった。またケモカインでは、直接・間接接触においてMCP-1, RANTESの著名な産生がみられた。一方、IP-10は直接接触でのみ産生されることが明らかになった。 HTLV-1ウイルスが網膜色素上皮細胞と接触することによって、TNF-α, IL-1βの上昇はみられないが、IL-6 IL-8という特定の炎症性サイトカインが産生されることで、炎症惹起される可能性が考えられた。また抑制性サイトカインIL-10の産生を抑制することで炎症をより促進することが考えられた。さらにMCP-1, RANTESなどのケモカインの産生で、炎症を維持することが考えられた。以上により、HTLV-1ぶどう膜炎における眼内炎症惹起・維持機序の一端が明らかになった。
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