補償光学(adaptive optics: AO)を適用した走査型レーザー検眼鏡(AO-SLO)は、眼球光学系全体の収差を補正し眼底を細胞レベルで観察、また網膜毛細血管において非侵襲的に血流動態を観察することが可能である。これまでに我々は、AO-SLOを用いて傍中心窩網膜毛細血管内を流れる高輝度粒子がその光学的特性から白血球あるいは血漿であることを報告した。また白血球の上流側に赤血球列が形成され、それが伸長する生理現象が網膜毛細血管にも存在することを発見した。今日まで網膜血流に関する研究は微小循環に限定すば、移動体の速度に関する評価が主であったが、赤血球列の伸長率は新たなパラメーターとしてより詳細な血流評価に使用できる可能性がある。また、我々の正常眼を用いた検討では、赤血球列は傍中心窩においてすべての毛細血管の中を流れているわけではなく流れやすい血管(preferential pathway)、流れにくい血管の2種類が存在することがわかっている。病糖尿病における毛細血管の閉塞は、このような血管の役割・分布の変化をきたすと考えられる。
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