本年度は角膜剛性を中心に細胞外マトリックスの機能的特性の解析を行った。 一つには角膜の菲薄化によって変形をきたす円錐角膜について解析を行った。これらの変形は偏心性変化(非対称性変化)と急峻化で検出されることが多い。多数例のヒト円錐角膜症例を収集し、そのin vivoでの計測を行って、経時的角膜形状解析変化を行った。その結果、軽症から重症までの形状解析が初めて可能となり、自然経過が判明した。菲薄化、前面と後面急峻化は経時的に進行し、若年者のみならず従来では進行しないと考えられてきた中高年者でも進行することがあることを見出した。また、年齢と最大角膜屈折力で今後の進行が予測可能であることも示した。さらに角膜急性水腫発生前は数年にわたって急速に進行する前駆性変化があることが見出された。その一方で非対称性は進行しないことも示した。 また、角膜剛性を担うケラタン硫酸の解析から、予想外に中枢神経系での機能を発見した。大脳皮質や基底核のうち、後天的学習に関する領域において、ケラタン硫酸の成熟が生後発達に伴って進行することを見出した。全脳において低硫酸化型ケラタン硫酸の分布が見られるが、生後発達に伴って一部の脳領域にのみ高硫酸化が行われ、これが後天的学習に関係する領域特異的に行われることを示した。 これらの結果は細胞外マトリックスの多面的な重要性を明らかにするものである。
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