研究実績の概要 |
近年細菌や真菌など感染症を引き起こす微生物に対して光感受性物質(photosensitizer,以下PS)を用いた治療法の研究が行われphotodynamic therapy(以下PDT)と呼ばれている。今回の研究目的はPSを用いたPDTをアカントアメーバ角膜炎に対して行うことである。最終的にはPSを点眼で投与しレーザーを角膜に照射することでアカントアメーバを殺すことが出来ればアカントアメーバ角膜炎への有効なアプローチの一つとして選択肢が増えることが期待される。研究成果として以下のものが挙げられる。 1)In vitroにおけるPDTによるアカントアメーバへの効果:PSとしてメチレンブルー(以下MB)を使用した。MB(-)光照射(+)群とMB(+)光照射(-)群では無処理群と比較して栄養体の呼吸活性率に有意差を認めなかったのに対してMB-PDT群ではMB濃度依存性に呼吸活性率の低下がみられた。またMB-PDTの抗アメーバ効果は光照射量依存性であることが認められた。抗アメーバ薬との併用効果についてはPHMBとAMPH-BではMB-PDTとの併用によって相乗効果がみられた。2)PDTの生体への毒性試験:MB+PDT+においてのみ、光照射後、角膜混濁、虹彩充血が観察されたが、1週間で角膜の透明性は回復し、炎症所見も消失した。処置直後の角膜内皮細胞は正常であった。3)アカントアメーバ角膜炎モデルに対するPDTの効果:チャイニーズハムスターのアカントアメーバ角膜炎モデルの作成ができず、In vivoにおけるPDTの治療効果は確認できなかった。 以上から、In vitroではアカントアメーバに対してPDTは有用であり、また生体への毒性も認められなかったが、アカントアメーバ角膜炎モデルの作成が困難であった。今後動物を変える等を含め角膜炎モデルの作成を検討していく予定である。
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